フォーレ「幻想曲」作品111
フォーレにピアノ協奏曲はありませんが、「バラード」Op.19と「幻想曲」Op.111という独奏ピアノとオケのための曲があって昔から好きでしたが、有名なピアニストはあまり弾いてくれなくて、昔はラローチャくらいでしたでしょうか。今聴いているのはプラッソン指揮の「フォーレ管弦楽曲全集」所収のコラールのピアノの演奏でこれもフランス的色彩濃厚な名演です。
曲はフォーレらしい幻想的で華麗なピアノが弦や管の甘いバックにのって転調していく極めてフォーレらしいエスプリに富んだ曲ですが、後半それなりに盛り上がっていきます。秋の一夜にふさわしいかも。
この全集は輸入盤2枚で1000円ちょっととお買い得です。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1509667
ポリーニのノーノ
ポリーニ・アバドの演奏でノーノという現代作曲家の「力と光の波のように」他(DG盤)を聴きました。
昔は無調音楽や十二音技法など現代音楽を避けてた感じでしたが、最近はすんなり受け入れ聴く機会を多くしています。
しかしノーノはかなり前衛的で、最初の曲は雅楽のような響きで夜空の水平線を思い浮かべるようで魅了されたのですが、4曲目あたりでピアノの打楽器的バーバリズム(?)が始まると、ほとんどホラー映画の世界。しかし強烈なリズムと感性がやがて興奮へと変わってきます。「しびれる」という表現がぴったりかも。
表題曲以外の収録曲は、ノーノ作曲「ソッフォルテ・オンデ・セレーネ」(アバド指揮バイエルン放送交響楽団)、マンツォーニ作曲「質量(ヴァレーズに捧げる)」(シノーポリ指揮 ベルリン・フィル)の小品です。
ハイフェッツのフランクのソナタ
ハイフェッツの名盤で知られているCDはほとんどが壮年期を過ぎたステレオ録音の時代のもので、やはり弦楽器演奏家は若い頃のほうがテクニックや音が優れていることは言うまでもなく、若い頃の演奏をいろいろ物色しています。
今日聴いたのは、まずRCA赤盤復刻(LP2枚分がCD化で1枚)の「若きハイフェッツ名演集」で、1925〜34年(ハイフェッツ24〜33歳)の最初期の電気録音。雨ザーザーのノイズは思ったほど大きくなく(カット処理はまあまあ)、彼の美音とテクニックを堪能できます。とりわけアクロン「ヘブライの旋律」、ドリゴ「火花のワルツ」、グリーグ「ソナタ3番」2楽章などの珍しい小品は鳥肌物です。hmvサイトで試聴もできます。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=457599";"
もう1つはEMIの初期録音集で、パガニーニ「カプリース」から3曲、コルンゴルド「時計のマーチ」、モシュコフスキー「ギターレ」(ジプシー風のカンタービレの曲)、バッツィーニの「ラ・ロンド・デ・ルゥティン」という技巧的な曲などの珍しい小品が含まれ、さらに目玉はフランク「ヴァイオリンソナタ」で何とルービンシュタインの伴奏。録音の古さを超越してすばらしい名演です。ディスク以外でも「ハイフェッツ大全集」、ナクソス盤、RCA盤など別のCDでも同じ録音が入手できます。技巧がすばらしいことは言うまでもなく、フランス的な感性はありませんが精神的な面で優れていると思います。よく聴いているとハイフェッツが譜面にない音まで弾いてます(あまり気になりません)ハイフェッツは引退時の「ラスト・リサイタルで再録音しています(ピアノはベイ)が、印象はまったく違って、このモノラル盤はニュアンスに富み、スケールが大きく、かと言って個性的でなく、非常に完成度の高い名演だと思います。
1952年製作のアメリカ映画(監督エドガー・G・ウルマー)で、この映画ほど音楽ファンにとって貴重ですばらしいものはないでしょう。ストーリーはしっかりしていて、ホールの掃除婦が我が子を音楽家に育てるために一流の演奏家のコンサートを舞台裏からこっそり子供に見させるようなプロットですが、そこに登場するのがまずストコフスキー(「オーケストラの少女」やディズニーの「ファンタジア」でも有名な指揮者)は例によって指揮棒を持たず両手を大きく広げながら気合いの入った指揮。そして当時すでに大御所であったワルターも厳粛で豪快な指揮。
さらにルービンシュタイン!お得意のアンコールピースだったファリャ「火祭りの踊り」やショパン「英雄ポロネーズ」を高々と腕を上げながら豪快そのものの快演!鳥肌物の映像でした。しかも何と演奏が終わってから舞台袖でその子供に「バッハを勉強しなさい!」って語りかけます。
ピアティゴルスキーは女性ハーピスト6人をバックにサン=サーンスの「白鳥」を繊細な演奏で聴かせてくれます。
そしてハイフェッツのチャイコフスキー「ヴァイコン」1楽章(抜粋。ライナー指揮)のすばらしい演奏!しかも出演前に控え室で役者同然の演技があっててたくさんのセリフがありました(お顔は真面目ですましつつユーモアのある会話)。こちらも立派なものでした。
メニューインBOXと映像
メニューインの協奏曲BOX(EMI10枚組)からヴュータンのヴァイコン4・5番を聴きました。
ロマン派のヴァイコンの中で技巧的な独奏の魅力としっかりしたオケパート(ハープ入り!)で知られています。ただ主題がはっきりしないのと終楽章が短い印象からそれほどメジャーではないと思いますが、アダージョ楽章のロマンティックさは人一倍でここに最大の魅力があるかもしれません。
メニューインは神童で知られた人ですが、晩年の録音はボウイングの雑さと音程のアラが目立ったせいか、近年話題にならない感じです(ハイフェッツを聞き慣れるといろいろ比較してしまう)。しかし、若いころはもちろん1950年代頃の録音も熱のこもった解釈と独特のヴィヴラートで聴き応えがあります。

あと「コンサート・マジック」という1947年製作のミュージックフィルムを見ました。映画っぽい作り方の白黒映像で、どこぞのお屋敷でピアノ伴奏の小品をメニューインが次々弾いていきますが、とりわけパガニーニのカプリース24番は正規盤にないのでメニューインの美音による超絶技巧が映像で見られるのは貴重です(クライスラー版なのでピアノ伴奏あり)。ただメニューインだけの映像ではなく、キャンベルやギンペルという聞いたことのないピアニストの演奏や、ユーラ・ビールというアルト歌手まで登場します。
フルトヴェングラーの第九
「第九」の季節は過ぎましたが、第九の話。
フルトヴェングラーの第九録音は10種近く世に出回っていて私が持っているのは5種、なかでも最も有名なバイロイト祝祭(1951年)盤が摩訶不思議な魅力を持っていて最も聴き応えがあることは言うまでもありません(最近、音楽評論家平林氏による復刻CDが話題になりました。写真)。
バイロイト盤以外の名演を以下いくつか紹介します。

BPO(1942年3/22〜24録音。ターラ盤)…第一楽章の深みや第四楽章のうねりと熱狂はバイロイトに比すべきものがあって、バイロイト盤で乱れているラストが速いテンポながら整然と終わっています。
VPO(1953年5/31録音。DG盤)…これもテンポ設定がバイロイト盤に実によく似ていて1楽章は非常に深みがあっていいです。2楽章はちょっと盛りあがりに欠ける感じ、4楽章は歌手陣はまあまあとして、どうもコーダに向かう燃焼力に欠ける(フルヴェンとして)感が否めず、ラストのスピードは皆揃ってるし打楽器がガンガン鳴って迫力があるんですが、バイロイト盤の不揃いの超スピードに勝るとは言えない巻もあります。
VPO(ルツェルン音楽祭1954年8/22録音。ターラ盤)…フルヴェン最後の第九の録音です。バイロイト盤より大人しい感じで2楽章あたりは遅め、4楽章も熱狂的な盛りあがりに欠ける感じがしますが、これはこれで古典的な解釈としてすばらしい演奏です。
クレンペラーのブルックナー
ここ半年近くクレンペラーをちょこちょこ聴いています。きっかけはブルックナー「交響曲5番」(ウィーンフィルライブ盤(SEVEN SEAS。1968年6月2日。最近出たBOXにも収録)です。
ブルックナーは大好き(全集だけで10種近くあります)、とくに大好きな5番は私にとってピタっとくる名演がないような気がして次から次に聴いてるんですが、なかでもこのクレンペラー盤は期待通りのとてつもないエネルギーをもった演奏でした。
ブルックナーでテンポをゆらすのは某評論家U氏にとっては許されないことだそうですけど、私はそうは思いません。むしろ次から次に変わる表情を的確なテンポで意志をもってつないでいかないとこの大曲の真価は表せないと思いますし、極端なアッチェレランドかけまくりの凄絶なフルトヴェングラー盤や、変幻自在のテンポが魅力のシューリヒト盤に、このクレンペラー盤は肉薄するものを感じます。
1楽章冒頭でウィーンフィルがとまどうほどのスローテンポ、それが高揚していくさまはブルックナーの構築感を見事についてましし、4楽章も展開部で止まりそうなほどの極端なリタルランドをかけつつ、じわじわと湧き起こる楽想がしだいに熱をおびラストのファンファーレを迎えるパッションはまさに圧巻です。ライブゆえの乱れがあったり、録音バランスでティンパニのロールがやたら大きめな点はありますが、今後病みつきになりそうな気配が十分あります。

クレンペラーのEMIへの膨大な録音(フィルハーモニア管・ニューフィルハーモニア管)は、私が若いころに聴いた時はゆったりとしたテンポで無難な演奏という印象しかなかったのですが、今改めて聴くと、彼の風格や細かな表情づけ、堅固でゆるぎない構築感、しあがりの美しい清澄なオケの響きなど、驚くことばかりです。改めて偉大さを感じたのは、ハイドン・ベートーヴェン・メンデルスゾーン・ブラームスあたりの交響曲、モーツァルト、ワーグナー、Rシュトラウスなどの管弦楽曲集(ヴァイルの三文オペラなど珍しい作品も)などでしょうか。

ホロヴィッツの映像

2006年1月13日
ホロヴィッツの映像
私の知る限りホロヴィッツの映像は次の9種類です。

?「ホロヴィッツ・オン・TV」のレコードで知られるカーネギーホール・ライブ(1968年。国内版なし)
…これが最もすばらしい映像です。数年前にNHK放映の「20世紀の名演奏」でスクリャービン「練習曲op8-12」の熱演のみ放映。また市販のDVD「アート・オブ・ピアニスト」にはビゼー・ホロヴィッツ編の「カルメン変奏曲」のみ収録され入手が容易です。

?カーター大統領の前で弾いたホワイトハウス・コンサート(1978年)
…TV放映(民放)のみ。国内版で市販されてません。ショパン「ソナタ2番」やラフマニノフ「VRポルカ」、「カルメン変奏曲」などギラギラした演奏で興奮のるつぼです。

?メータ指揮でラフマニノフ「ピアノ協奏曲3番」(1978年。DGでVHS・DVD化。写真)
…現在廃盤でオークションで高値で取り引きされてます。唯一の協奏曲の映像でライブのためアラもありますが、3楽章の盛り上がったところで楽員たちを鼓舞するようなホロヴィッツのパフォーマンスには鳥肌が立ちます。

?チャールズ皇太子夫妻の前で弾いたロンドン・ライブ(1982年。VHS化)
…ラフマニノフのソナタ3番は情熱的な演奏。王子誕生祝いでプログラム変更されたシューマン「子供の情景」もすばらしい出来です。

?衝撃的な初来日の東京ライブ(1983年。NHKホール)。
…私も5万円するチケットを借金して購入して行きました!今でも全てをありありと思い出すコンサート。しかし当時ホロヴィッツは精神安定剤を服用していて本調子でなくアンコールもなし。翌日NHKで放映されましたが酷評を受けました。ですがベートーヴェン「ソナタ28番」やショパン「練習曲」数曲、シューマン「謝肉祭」といった現在もリリースされていない彼の珍しいレパートリーだったので非常に貴重な映像です。名誉挽回のために再来日した1986年のライブはすばらしい演奏だったのに録音・映像はないようです。

?ジュリーニ指揮でモーツァルト「ピアノ協奏曲23番」レコーディングセッション(1986年。マジック・オブ・ホロヴィッツと題してDGからDVD化。かつてNHKで放映された)
…録音風景を収録した非常に貴重な映像。3楽章の主題の改変などホロヴィッツのわがまま(?)とそれを笑顔で迎えるジュリーニが印象的。

?モスクワ・リサイタル(1986年。モスクワ音楽院大ホールSONYからDVD化)
…この年齢を考えると完成度は高いほうで非常に感銘的なライブ。シューベルト(リスト編)「ウィーンの夜会第6番」やモシュコフスキー「花火」あたりが印象的です。またアンコールの「トロイメライ」を聴く観衆の目に涙が光り感動を誘います。

?ラスト・ロマンティック(1987年。次のウィーンライブとあわせて自宅でピアノを前にインタビュー。NHK−BSで放映。一部が「カーネギーホール」未編集リサイタルの特典DVDとして市販)…ショパンの「黒鍵のエチュード」「英雄ポロネーズ」などを弾いてますが、自宅で気楽に演奏してるので精巧さに欠けます。

?ウィーン・ライブ(1987年。NHK−BSで放映)
曲目は?とほぼ同じで、どちらかと言えば?よりも演奏の出来が下回ります。

追記。若いころの無声の映像もありました。ショパンの練習曲0p25-10のような両手オクターブと思われる曲などを弾く映像でスローモーションによって完璧な指の動きを見るような記録映像です。音がないのが残念!

この他にもありましたら情報をお教えください。
ホロヴィッツのチャイコン
ホロヴィッツは私がピアノ音楽にはまるきっかけになった巨匠ピアニストです。彼によってショパンやシューマンのファンタジーに目覚め、スカルラッティやスクリャービンのすばらしさを知り、トランスクリプションの面白さを味わえました。正規盤CDは全て買い尽くし、あとライブ盤をいろいろ物色中です。
今日は彼がお得意のチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲1番」について書いてみます。
録音の記録は以下の通りで、全てライブのモノラル録音です。
?マルコ指揮(一部のみ。1934年。詳細不明)
?バルビローリ指揮(1940年。ニューヨークPO。ウラニア盤)
?トスカニーニ指揮(1941年4月。NBC。RCA)
?同       (1941年5月。NBC.RCA)
?同       (1943年。NBC) 
?スタインバーグ指揮(1945年。ハリウッドボウルSO。ミュージックアーツ)
?ワルター指揮(1948年。ニューヨークPO。ミュージックアーツ盤)
?スタインバーグ指揮(1949年。ハリウッドボウルSO。?と同一の可能性あり)
?セル指揮(1953年。ニューヨークPO。ミュージックアーツ盤)

このうち?と?はLP時代から名演の誉れの高い岳父トスカニーニとの丁々発止の名盤、最近話題なのが?のセルとの凄絶な演奏ですが、目立たないところで?を取り上げてみます。

?はホロヴィッツのチャイコンとしては早い時期の貴重なライブで、爽快な技巧は神業のよう!バルビローリのゆったりとしたテンポは彼には珍しくトスカニーニ盤などと違う魅力を聴けますが、ただ3楽章の盛り上がりはセル盤より下回ります。
カップリングはラフマニノフ3番で、コーツ指揮やライナー指揮の録音と同レヴェルの出来ながら、録音が貧しいのが玉に傷です。

比類なきフランソワ

2006年1月11日
比類なきフランソワ
フランソワのモノラル録音集「比類なきフランソワ」(EMI。8枚)
収録曲のなかで、シューマン「ピアノ協奏曲」「トッカータ」「交響的練習曲」「謝肉祭」「子供の情景」あたりはフランソワのレパートリーでは珍しいものばかりです。例によってルバートをきかせまくり唯一無比のシューマンになってます。同じEMIのナットのシューマンに比べると、同じフランス人によるシューマン演奏ですがナットは堅固な感じ、フランソワは例によって夢幻的で師コルトーを彷彿とさせます。また技巧的な「トッカータ」ではスピード感は今一つでちょっとアラもありますが彼独自のファンタジーにあふれています。
シューマン以外では、フォーレのピアノ四重奏曲1番と夜想曲や即興曲数曲、バッハ=ブゾーニの小品、フランクの「ピアノ五重奏曲」「前奏曲、コラールとフーガ」、メンデルスゾーンの「ロンカプ」、スクリャービンのソナタ3番、プロコフィエフのピアコン3・5番、ヒンデミットの「テンペラメント」、なども入っていて大変興味深く、フランソワの知られざる面がたくさん聴けるのが魅力です。さらにフランソワ自身作曲の「ピアコン」や映画音楽、ナレーションまで収録されていて、フランソワのファンならぜひおすすめのBOXです。
詳しくはhttp://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=145898

フランソワの映像

2006年1月10日
フランソワの映像
グリーグ「ピアノ協奏曲」&ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」サンソン・フランソワ(EMI。DVD。白黒映像)

グリーグの「ピアノ協奏曲」はフランソワのレパートリーでは珍しいほうですが、考えたらこのロマンティックな名品はショパンを得意とするフランソワにぴったりで、じっくりねっとりとしたアゴーギグやルバートは彼ならではで、今まで聴いたことのないグリーグを聴くことができました。
後半のラヴェル「左手のための協奏曲」は私の大好きな曲で、クリュイタンス指揮の名盤がありますが、即興性を生かしたスタッカートなどこのライブならではの魅力に満ち、テンポ感やピアニズムも絶好調でした。指揮のフレモーもこの映像を見て非常に関心しましたが、モンテカルロのオケは華やかすぎる面もあり(特にラッパが浮き気味)ラヴェルらしからぬところもありました。とにかく聴き終わって、名曲を名演で聴いた感動の余韻が心地よかったです。
バックハウスのショパン
LP時代、バックハウスに夢中になり正規盤を全部集めましたが、その時大好きだったなかに「ショパンリサイタル」という廉価盤2枚がありました。一言で言えば、ドイツ人による独特の感性のショパンと言えるでしょうが、モノラル録音ながら逆に一音一音が鮮明で、非常に聞き応えがあります。
SP時代ショパンの「練習曲」と言えばコルトーとともにバックハウスの技巧万全の演奏が人気を集めたと言われてますが、バックハウスがモノラル時代に再録音したこのCDの「練習曲」(抜粋)は非常に丁寧な演奏で、特に「別れの曲」は普通の倍くらいゆったりとしたテンポで歌うように始まり、中間部で颯爽と速めて盛り上がったあと、主題再現でまた元のテンポにもどります。「ワルツ2番」も、2小節間にまたがる13連符の音階でさーっと駆け上がるところの3度目(コーダに入るちょっと前)は止まるかのようにリタルダントをかけ、その後テンポを飛ばす風で、心憎い非常に魅力あるテンポ設定だと思います。
で、ずーっとCDになるのを待ってたんですが、本家のデッカではなく、テスタメントから再発されました(しかもLP2枚分がCD1枚に)。ショパン好きの方にはおすすめします。
グールドの現代音楽
グレン・グールドはJSバッハのピアノ演奏で広く知られますが、ロマン派あたりの録音は少ないものの、近現代作品で比較的多くの作品を録音してます。
ヒンデミット・シェーンベルグのピアノ小品集の演奏も非常に奥の深いすばらしい演奏です(歌曲伴奏もあり)が、この写真の「現代作品集」のCD(CBS盤)ではモラヴェツ「幻想曲」、アンハルト「幻想曲」、エテュ「変奏曲」、ペントランド「影法師」、ヴァレン「ピアノ・ソナタ第2番op.38」が収録されています。一般的に知られていない作曲家からのグールドらしいセレクションですが、スクリャービンのような色彩感で、不思議な感性による和声を聴くと、闇の狂気を感じたり、あるいは果てしなく広がる地平線を思わせるような、どれも非常に魅力的な曲です(形容が難しい…!)。
ルービンシュタインのDVD
「アルトゥールルービンシュタイン」(KULTUR)!
製作年代は明記されてませんが、おそらく1950年前後のテレビ用の映像だと思います。安いのであまり期待しないで買ったら、これはとんでもない貴重映像でした(ルービンシュタインの映像といえばプレヴィン指揮で3曲のピアコンのスタジオ録画や、映画「カーネギーホール」などが有名ですが、この映像の存在はあまり語られてないようで知りませんでした)
お屋敷(自宅?)の中でインタビューを交えながら気さくにショパンのいくつか(軍隊・英雄ポロネーズ、スケルツォ3番ほか)を弾き、さらにハイフェッツ・ピアティゴルスキーの黄金トリオでメンデルスゾーンのトリオ(1〜3楽章)まであるんです!
後年のステレオ録音と違って覇気があり、ルバートもかなり大胆。トリオはハイフェッツらの神業も聴け、また演奏の前後のおしゃべり(あわやハイフェッツとピアティゴルスキーの喧嘩も?ルービンシュタインが仲裁に入りますがシナリオがあるんでしょう)も興味深く、映像としてはおすすめですが、このDVDは自宅のプレイヤーでは再生できなかったので、詳しい人に映像を見られるようにしてもらいました。この点にご注意下さい。くわしくはhttp://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1475854
フィリップスに録音されたハスキルの正規盤録音集成BOX12枚組を聴きました。
ハスキルといえば無類のモーツァルト弾きとして知られ、協奏曲20・23・24番やグリュミオーとのヴァイオリンソナタ6曲あたりは不滅の名盤と言えるもので、若い頃から愛聴してます。あとこのBOXには、シューベルト「ピアノソナタ21番」、ラヴェル「ソナチネ」、ファリャ「スペイン庭の夜」、さらにベートーヴェンのヴァイオリンソナタ(グリュミオー)なども含まれ、どの演奏も優しくて思いやりがあって暖かなピアノです!彼女のライブ録音など現在は非常にたくさん出ていますが、今年はゆっくり集めようと思っています。

コルトーのリスト

2005年12月29日
コルトーのリスト
*コルトー「リスト作品集」(PEARL盤。1930年代録音)
往年の名匠アルフレッド・コルトーの珍しいレパートリーで、ピアノソナタやハンガリー狂詩曲2番・11番、リゴレットパラフレーズなどEMIの「コルトーの芸術(全2集)」にほとんど未収録の曲ばかりが収められています。聴いてびっくり、長大な「ピアノソナタ」の天国的な部分は幽玄そのもので、彼のロマンティックなスタイルのリスト演奏で堪能できます。輸入盤で怖々注文したんですが、意外に録音状態もよく、またアラもそんなになかったのが嬉しいです。
コルトーと言えば最近CBSから1930年代の公開レッスンを収録した「コルトー・マスタークラス」(CD3枚組)も発売され、ベートーヴェンを含むさまざまなピアノ曲へのアプローチがよくわかりました(全曲演奏ではありません)が、ここにはリストや近代フランス音楽が収録されていないのが残念です。
リヒテル「イン・メモリアム」
リヒテル「イン・メモリアム」(DG盤。1959〜65年録音)
中学のころリヒテルの演奏に出会って間もない頃に買った廉価盤LP(たしか「イタリー楽旅」という題で2枚組)の音源のCD化をずっと探してたのですが、ようやく見つけました。おまけに追加の曲もあってDG録音の小品がCD2枚にたっぷり入ってお徳用盤です。特にショパン「バラード3・4番」「幻想ポロネーズ」「エチュード10-1、革命」、シューベルト「アレグレット」、ドビュッシー「版画」などはどれも極め付きの名演で、今聴いても感動は同じでした。

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