カザドシュ
フランス人ピアニストを語る上で、コルトー、フランソワとともにカザドシュを忘れるわけにはいかない。今回集中的に聞いているので彼の往年の名演を回想したい。

ロベール・カザドシュ(1899~1972年)
澄んだ硬質の音でクリアーな表現をしつつ、ウィットに富んだ感性やざらっとした即興感やスケールの大きな表現が巨匠的風格を宿している。
ところが、CBSレーヴェルに録音された彼の多くの録音は国内盤も再発されてないようだし、輸入盤でも入手しにくい状況なのは残念。

モーツァルトのピアノ協奏曲21番、22番、23番、24番、26番、27番の6曲(3CD)。セル指揮クリーブランド管弦楽団他の演奏(1959~62年)。
暖かい音で曲のよさを大事にしたような名盤で、セルの伴奏も非常にすばらしい。ただ今となっては録音が古く、ピアノの音質がよくない。

シューマン
蝶々、交響的練習曲、森の情景の3曲(1960年)。
蝶々は速いテンポで颯爽とした感じであるが、テンポのアゴーギグはちょっと一本調子のところも。森の情景もさらっとした印象で曲のよさを伝えている。メインとも言える交響的練習曲はスケールの大きな演奏で、歯切れのよさからホロヴィッツの演奏?と聞き違えるような印象。途中少しあらがある。

サン=サーンスのピアノ協奏曲4番&フォーレのバラード
バーンスタイン指揮ニューヨークフィルの演奏(1961年)。
特にサン=サーンスはすばらしい名演。フランス的な繊細さとこの曲特有の迫力が見事に昇華されている。何より歯切れのよいピアノがバーンスタインののりのいいバックに力負けせず対抗しているところがいい。名盤である。あとフォーレの前奏曲3曲がおまけで入っており、これもニュアンスに富んだ演奏。

フランクの交響変奏曲、ダンディのフランス山人の歌による交響曲、ラヴェルの左手のための協奏曲
オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏(1959、60年) 。
いずれもウィットに富んだフランス的な感性を出しつつ、構成的にはしっかりしている。ピアノは歯切れよく、響きは小さめで混濁感はないのが私の好み。ただフィラデルフィアのバックがちょっと荒いのが残念。

ラヴェルのピアノ独奏曲全曲(1951年。2CD)
モノラル録音ながらクリアーで音質はいい。何よりフランス的なエスプリに満ちたラヴェル演奏は稀少で、これが世界最古のラヴェル全集だったとは耳を疑う。ギーゼキングの3年前にあたる。鏡、クープランの墓、夜のガスパール、水の戯れ、などなど、どの曲も技巧的に問題なく歯切れのよいガラス細工のような演奏。響きを大事にしてペダルを多用しないところが好感もてる。即興的なフランソワの演奏に比べると、入念でベテランの味。録音もよいし、すばらしい名盤。

ドビュッシー「小組曲」、サティ「梨の形をした3つの小品」、フォーレ「ドリー組曲」他(ギャビー・カザドシュと4手演奏。1959年)
初期ステレオ録音の時代であるが、鮮明な録音。何より演奏はすばらしいの一言。カザドシュ夫妻の連弾や4手演奏は当時非常に人気があったことはこのCDを聴けば納得できる。繊細にして優雅、フランスのしゃれた味わい、何よりデュオの息がぴったりあってること。特にフォーレが名演。

フランク&フォーレのヴァイオリンソナタ
フランチェスカッティのヴァイオリン独奏(1953年)。モノラル録音であるが音質はいいほう。コルトー、ティボーの名盤に匹敵する存在。フランチェスカッティの柔らかな音質とクリアーなカザドシュの伴奏はこれらの曲にちょうどあっている。フランクの1楽章の冒頭を聞くだけで彼らのすばらしさを実感できる。
グールドの現代音楽
グレン・グールドはJSバッハのピアノ演奏で広く知られますが、ロマン派あたりの録音は少ないものの、近現代作品で比較的多くの作品を録音してます。
ヒンデミット・シェーンベルグのピアノ小品集の演奏も非常に奥の深いすばらしい演奏です(歌曲伴奏もあり)が、この写真の「現代作品集」のCD(CBS盤)ではモラヴェツ「幻想曲」、アンハルト「幻想曲」、エテュ「変奏曲」、ペントランド「影法師」、ヴァレン「ピアノ・ソナタ第2番op.38」が収録されています。一般的に知られていない作曲家からのグールドらしいセレクションですが、スクリャービンのような色彩感で、不思議な感性による和声を聴くと、闇の狂気を感じたり、あるいは果てしなく広がる地平線を思わせるような、どれも非常に魅力的な曲です(形容が難しい…!)。
リヒテル「イン・メモリアム」
リヒテル「イン・メモリアム」(DG盤。1959〜65年録音)
中学のころリヒテルの演奏に出会って間もない頃に買った廉価盤LP(たしか「イタリー楽旅」という題で2枚組)の音源のCD化をずっと探してたのですが、ようやく見つけました。おまけに追加の曲もあってDG録音の小品がCD2枚にたっぷり入ってお徳用盤です。特にショパン「バラード3・4番」「幻想ポロネーズ」「エチュード10-1、革命」、シューベルト「アレグレット」、ドビュッシー「版画」などはどれも極め付きの名演で、今聴いても感動は同じでした。

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