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バッハのゴールドベルク変奏曲
2007年7月4日コメント (4)
バッハ・シリーズ第3弾で、人気曲「ゴールドベルク変奏曲」BWV988です。ニ長調の明朗な旋律を主題とし、30もの対位法的手法でさまざまな性格の変奏にしあがり、まさに変奏曲の王様。バッハはこれを不眠症に悩むカイザーリンク伯(バッハの弟子のゴールドベルクが仕える)のために作曲したという有名なエピソードが嘘のように1時間近い演奏時間が退屈しない。最晩年の傑作です。
(1)ランドフスカ(1934,EMI。cemb.)…世界初録音。ドイツ的なバロックの流れを汲む構成感や表現力は今聴いても全く古びていません。歴史的名演奏にしてSPによるこの曲の代表的録音。
(2)アラウ(1942,RCA。pf)…万全な技巧によるドイツ的で立派な演奏なのに、録音が貧しいのが残念。ランドフスカがRCAに録音したので久しくお蔵入りになった幻の録音(ちなみにRCA復刻盤よりフィリップスのBOX盤のほうがノイズが少ない)。
(3)ランドフスカ(1945,RCA。cemb)…再録音。ただチェンバロ自体の音が独特すぎて好悪分かれそう。EMI盤のほうがおすすめ。
(4)グールド(1955,CBS。pf)…グールドのデビュー盤にして強烈な個性で彼の名がメジャーになった代表的録音。ノンレガートによる独特のタッチや、スリリングな技巧など現在も価値を失っていない。学生時代初めて聴いた時の驚きは今も忘れていない。
(5)ヴァルヒャ(1961,EMI。cemb)…アンマーチェンバロによる甘い音の響き。バッハが乗り移ったかのような威厳と説得力をもった精神的な演奏で、すばらしいの一言。
(6)ピーター・ゼルキン(1966,RCA。pf)…やや遅めのテンポながら明晰かつ個性的なピアニズムで聴きどころが多い。なお父ゼルキンはアリアの主題だけ録音している(CBS盤)。
(7)ユージナ(1968,メロディア。pf)…リヒテルが「グールドもユージナに比べればかわいいものだ」と述べたことで知られる女流ピアニスト。彼女の個性は鮮烈で、独特のテンポ感とピアニズムに快感を覚えるほど。この曲の異形さで言えばグールドと双璧。
(8)ケンプ(1969,DG。pf)…ドイツの大家ではゼルキン・バックハウスとも録音しなかったのでケンプの一枚は非常に貴重(おまけにバッハでもまともな録音は少ない)。暖かな表情のするバッハ演奏で、装飾音の扱いはやや現在と異質で淡白ながら、説得力のある演奏。
(9)リヒター(1970,アルヒーフ。cemb)…バッハ演奏の大家によるチェンバロ演奏。堅固な構成で学究的な印象。
(10)レオンハルト(1976,HM。cemb)…リヒターより自由な印象ながら非常に丁寧で表情づけも豊かなので聴き応えがある。
(11)ニコラーエワ(1979,メロディア。pf)…現代ピアノの性能を生かした豊かな響きによるバッハ。ロマンティックな印象。
(12)ピノック(1980,アルヒーフ。cemb)…チェンバロ演奏ではヴァルヒャと双璧の感がある名盤。がっしりした構成で典雅なチェンバロの響きが印象的。これも万人向けでおすすめ。
(13)グールド(1981,CBS。pf)…同曲でデビューしたグールドが人生の最後にまたこの曲を録音したことが興味深い。旧盤よりも全体にゆったりとしたテンポで、瞑想的な表現やデリケートな演奏が印象的。スタジオで録音風景を撮影した映像もDVD化されており貴重。
(14)シフ(1982,デッカ。pf)…軽妙なスタイルで装飾音が独自であるが、構成感がしっかりして速めでスリリングなところが聴き所。グールドのノンレガートな演奏と好一対。
(15)ティーポ(1986,EMI。pf)…イタリアの女流で、非常に細やかな表情づけやピアノの響きを大切にした演奏で、健康的なバッハ。学習者におすすめしたい。
(16)バレンボイム(1989,エラート。pf)…ブエノスアイレスでのライブで、ホールの響きがよくテクニックも万全。明るく健康的な印象でおすすめ。そう遅くは感じないのになぜかCD2枚組。
(17)ガブリーロフ(1992,DG。pf)…彼特有のパワフルさは控えめで、優しく響きを大切にした演奏。どちらかと言うとノンレガート気味で軽妙な印象。
(18)テューレック(1998,DG。pf)…グールドに影響を与えたカナダの女流奏者で、バッハを得意とし、数種あるゴールドベルクの録音のこれは最後の録音。80歳の時の録音ながらテクニックは問題なく、たっぷりとしたテンポで一音一音を大切にした演奏で、細やかでロマン的な表情が印象的。なおCDは2枚組。
(19)ベルダー(1999,ブリリアント。cemb.)…155枚BOXの1枚。調弦が低めなのがびっくり。健全で安定した演奏で、装飾音がやや自由な趣き。
(20)ペライア(2000,CBS。pf)…ガラス細工のようなきらめくような響きが印象的。ゆったりとしたテンポで丁寧な演奏。
(21)ヒューイット(2000,ハイペリオン。pf)…彼女はバッハのクラヴィーア曲のほとんどを録音し、オーソドックスなタッチによる丁寧で深みのある演奏が多いなか、ゴールドベルクの録音はかなり個性的な面が伺える。リピートのたびに表情を変えたり大胆にテンポを動かしたり、好悪分かれそう。
(22)ラクリン・マイスキー・今井信子(2006,DG。シトコヴェッキーによる弦楽三重奏版)…珍しい室内楽編曲版。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの弦楽器で持続音が重なるところが実に美しく、編曲も楽曲に忠実。私は東京ライブで実演を聴いたが、最後のアリアに戻ったあと照明が全て消えてホールが闇に包まれたところは鳥肌物でした。また第25変奏アダージョの遅さは異例で非常に瞑想的で聴き応えがある。
(1)ランドフスカ(1934,EMI。cemb.)…世界初録音。ドイツ的なバロックの流れを汲む構成感や表現力は今聴いても全く古びていません。歴史的名演奏にしてSPによるこの曲の代表的録音。
(2)アラウ(1942,RCA。pf)…万全な技巧によるドイツ的で立派な演奏なのに、録音が貧しいのが残念。ランドフスカがRCAに録音したので久しくお蔵入りになった幻の録音(ちなみにRCA復刻盤よりフィリップスのBOX盤のほうがノイズが少ない)。
(3)ランドフスカ(1945,RCA。cemb)…再録音。ただチェンバロ自体の音が独特すぎて好悪分かれそう。EMI盤のほうがおすすめ。
(4)グールド(1955,CBS。pf)…グールドのデビュー盤にして強烈な個性で彼の名がメジャーになった代表的録音。ノンレガートによる独特のタッチや、スリリングな技巧など現在も価値を失っていない。学生時代初めて聴いた時の驚きは今も忘れていない。
(5)ヴァルヒャ(1961,EMI。cemb)…アンマーチェンバロによる甘い音の響き。バッハが乗り移ったかのような威厳と説得力をもった精神的な演奏で、すばらしいの一言。
(6)ピーター・ゼルキン(1966,RCA。pf)…やや遅めのテンポながら明晰かつ個性的なピアニズムで聴きどころが多い。なお父ゼルキンはアリアの主題だけ録音している(CBS盤)。
(7)ユージナ(1968,メロディア。pf)…リヒテルが「グールドもユージナに比べればかわいいものだ」と述べたことで知られる女流ピアニスト。彼女の個性は鮮烈で、独特のテンポ感とピアニズムに快感を覚えるほど。この曲の異形さで言えばグールドと双璧。
(8)ケンプ(1969,DG。pf)…ドイツの大家ではゼルキン・バックハウスとも録音しなかったのでケンプの一枚は非常に貴重(おまけにバッハでもまともな録音は少ない)。暖かな表情のするバッハ演奏で、装飾音の扱いはやや現在と異質で淡白ながら、説得力のある演奏。
(9)リヒター(1970,アルヒーフ。cemb)…バッハ演奏の大家によるチェンバロ演奏。堅固な構成で学究的な印象。
(10)レオンハルト(1976,HM。cemb)…リヒターより自由な印象ながら非常に丁寧で表情づけも豊かなので聴き応えがある。
(11)ニコラーエワ(1979,メロディア。pf)…現代ピアノの性能を生かした豊かな響きによるバッハ。ロマンティックな印象。
(12)ピノック(1980,アルヒーフ。cemb)…チェンバロ演奏ではヴァルヒャと双璧の感がある名盤。がっしりした構成で典雅なチェンバロの響きが印象的。これも万人向けでおすすめ。
(13)グールド(1981,CBS。pf)…同曲でデビューしたグールドが人生の最後にまたこの曲を録音したことが興味深い。旧盤よりも全体にゆったりとしたテンポで、瞑想的な表現やデリケートな演奏が印象的。スタジオで録音風景を撮影した映像もDVD化されており貴重。
(14)シフ(1982,デッカ。pf)…軽妙なスタイルで装飾音が独自であるが、構成感がしっかりして速めでスリリングなところが聴き所。グールドのノンレガートな演奏と好一対。
(15)ティーポ(1986,EMI。pf)…イタリアの女流で、非常に細やかな表情づけやピアノの響きを大切にした演奏で、健康的なバッハ。学習者におすすめしたい。
(16)バレンボイム(1989,エラート。pf)…ブエノスアイレスでのライブで、ホールの響きがよくテクニックも万全。明るく健康的な印象でおすすめ。そう遅くは感じないのになぜかCD2枚組。
(17)ガブリーロフ(1992,DG。pf)…彼特有のパワフルさは控えめで、優しく響きを大切にした演奏。どちらかと言うとノンレガート気味で軽妙な印象。
(18)テューレック(1998,DG。pf)…グールドに影響を与えたカナダの女流奏者で、バッハを得意とし、数種あるゴールドベルクの録音のこれは最後の録音。80歳の時の録音ながらテクニックは問題なく、たっぷりとしたテンポで一音一音を大切にした演奏で、細やかでロマン的な表情が印象的。なおCDは2枚組。
(19)ベルダー(1999,ブリリアント。cemb.)…155枚BOXの1枚。調弦が低めなのがびっくり。健全で安定した演奏で、装飾音がやや自由な趣き。
(20)ペライア(2000,CBS。pf)…ガラス細工のようなきらめくような響きが印象的。ゆったりとしたテンポで丁寧な演奏。
(21)ヒューイット(2000,ハイペリオン。pf)…彼女はバッハのクラヴィーア曲のほとんどを録音し、オーソドックスなタッチによる丁寧で深みのある演奏が多いなか、ゴールドベルクの録音はかなり個性的な面が伺える。リピートのたびに表情を変えたり大胆にテンポを動かしたり、好悪分かれそう。
(22)ラクリン・マイスキー・今井信子(2006,DG。シトコヴェッキーによる弦楽三重奏版)…珍しい室内楽編曲版。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの弦楽器で持続音が重なるところが実に美しく、編曲も楽曲に忠実。私は東京ライブで実演を聴いたが、最後のアリアに戻ったあと照明が全て消えてホールが闇に包まれたところは鳥肌物でした。また第25変奏アダージョの遅さは異例で非常に瞑想的で聴き応えがある。
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コメント
でも原曲に忠実な編曲でしたので、ピアノ譜を弦楽奏者3人が分担して演奏する感じで考えたら、大体のようすはわかりますね(笑)。