バッハの平均律

2007年6月26日
バッハの平均律
バッハのクラヴィーア曲集シリーズで、第2弾です。
「平均律クラヴィーア曲集」は巨大なバッハの作品で各巻24曲ずつ全ての調性で書かれたプレリュードとフーガから成ります。
以下に挙げるのは全2巻の全曲録音のみです。昨年にも日記で平均律を取り上げましたが、その後最新録音含めてあれこれ聴きまくりましたので、まとめておきます。

(1)フィッシャー(1936,EMI。pf)…ベートーヴェンソナタ全集で言うとシュナーベルと同じ位置にある歴史的名演。モノ録音でアラもあるので万人向けではありませんが、この曲集を語るうえで欠かせない存在です。曲によって表情を変え、ペダリングを生かしてロマンティックな面もあって独特のバッハで、聴き飽きません。

(2)ギーゼキング(1950,DG.pf)…新即物主義の彼らしく楽譜に忠実に一気呵成に弾いた印象。放送録音なのでアラも一部見られますが立派な演奏です。フィッシャーに比べると堅い印象ですが、ノンペダルの演奏は技巧的に感心します。

(3)テューレック(1953,DG。pf)…カナダ出身の女流ピアニストで畏敬をこめたバッハ像がエキセントリックながら迫真に迫るような感じ。グールドに影響をあたえたことでも知られています。私が聴く限り1番ハ長調プレリュードはもっとも遅い演奏。

(4)ランドフスカ(1954,RCA。Cemb)…古い演奏でチェンバロの響きに好悪分かれそうですが、彼女の敬虔なバッハ像が際だっていて聴き応えがあります。ただチェンバロの癖のある古びた音の響きが人によって好悪分かれそう。

(5)ヴァルヒャ(1961EMI。Cemb)…旧録音。チェンバロ演奏ではイチオシで、バッハ自身が彼の身体に乗り移って弾いているような精神性に富んだものです。どの曲も説得力があります。アンマー社製チェンバロの音に暖かみが感じられます。テンポはどれも遅めです。

(6)グールド(1971,CBS。pf)…奇才グールドの才能を示したもので、ピアノをチェンバロ的に弾いたり、響きを残したり、いろいろな発見のある演奏です。スリリングでやたらと速いと思えば、瞑想的なフーガがちょっと遅すぎたり、ロボットが弾いてるようなスタッカートの弾き方でも好き嫌いに分かれそう。

(7)園田高弘(1972,デンオン。pf)…堅固な構成で立派な演奏です。抑制のきいた知性的なバッハで、緩急の差も少なく淡々と弾いていますが冷たくはありません。テンポは遅すぎず早すぎずという感じで中庸です。

(8)グルダ(1973,フィリップス。pf)…ピアノによる正攻法の演奏ですが、独自の装飾音は彼の自作の曲を彷彿とさせ、やはりグルダの個性が感じられる録音です。テンポは中庸で遅すぎたり速すぎたりはありません。

(9)リヒテル(1973,メロディア。pf)…現代ピアノの特性を生かした演奏で、彼らしいオリジナリティに富んで、緩急の差が激しく、巨人らしい解釈が面白いです。バッハというよりリヒテルのスリリングさやスケールの大きさを聴く演奏。プレストの曲ではテンポは最速かもしれませんが、アダージョは逆に人一倍遅かったりします。

(10)レオンハルト(1973,HM。cemb.)…ヴァルヒャとならぶチェンバロ演奏のおすすめ。学究的な印象ですが冷たい感じはなく、淡々と弾いているようで非常に説得力があり、曲による表情の変化も巧みです。テンポはやや速めです。

(11)ヴァルヒャ(1974,アルヒーフ.cemb)…2度目の全曲録音。第1巻はリュッカース、第2巻はエムシュを使用。演奏様式で旧録音と大きな差はありませんが、ニュアンスや表情づけはより自由で柔軟な感じがして大家風の演奏です。

(12)ルイ・ティリ(1977,アリオン,オルガン演奏)…オルガンによる珍しい平均律演奏。これがまた美しい!オルガンというよりリコーダーの合奏のような爽やかなハーモニーもあれば、フーガでは荘重な雰囲気が抜群。テンポ感もかなり颯爽としていて聴き応えがあります。

(13)シフ(1984,デッカ。pf)…現代ピアノならではの響きを生かし、彼のオリジナルの装飾音など示唆に富む演奏で、グールドとは対極にあるような工夫としなやかさを感じます。丁寧で録音も優秀です。テンポは中庸です。

(14)ニコラーエワ(1985,メロディア.pf)…日本での録音。ほぼノンペダルで重いタッチによる響きのよい演奏で、アゴーギグやダイナミックスの変化は独特。主題の声部を際立たせたり、テンポも遅めでじっくり弾いてるので学習者は参考になる。

(15)アファナシエフ(1995,デンオン。pf)…数々の異色の個性的演奏で知られるピアニストですが、多少のルバートやアゴーギグくらいで、どちらかと言えば正統派の演奏に近い。テクニックも万全でスピード感もあり、たっぷりの響きでピアニスティックなところが多くて聴き応えがあります。

(16)ヒューイット(1997,ハイペリオン。pf)…非常に丁寧かつ深みのある演奏でバッハを強く感じる名演です。シフのような軽妙さとレオンハルトのような学究肌的なものが丁度ミックスされたような、ほどよい即興性も魅力。テンポは中庸です。

(17)ベルベン(1999,ブリリアント。cemb)…155枚BOX所収。全体に速めのテンポ、ルバートが大きいところもあったり性急な感じのところも。あと録音の問題として響きがよすぎて音がこもりがちなのが残念。

(18)バレンボイム(2004,ワーナー。pf)…独特の響きの美しさ、曲ごとに大きく表情を変えるテンポ感など、非常に吟味された演奏です。よく聴くとオクターブにしたり音を変えたりしているとこもあります。フーガなど非常に遅いテンポもあり、CD枚数は最多の5枚組。

(19)アシュケナージ(2005,デッカ。pf)…響きが美しく技巧的にも完璧で現代を代表する名盤。フィッシャーが現代に蘇ったような演奏スタイルでどの曲も味のある演奏で、これまた万人向けです。テンポは速すぎず遅すぎずというところです。

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