ブラームスの交響曲全集
ブラームス交響曲全集はCD3枚くらいだし昔の名盤が廉価になってることが多いのでついつい買ってしまいます。以下所蔵のものを整理してコメントしておきます。

(1)フルトヴェングラー・VPO・BPO(1947〜52年。EMI)
全集としての企画ではなく戦後のライブの集成。音がよければ間違いなくベスト盤。1番のアゴーギグや3番の盛りあがり、4番の枯れた味わいなどドイツ音楽の魅力を堪能できます。ちなみに各曲複数のライブ録音があり(1番はターラ盤やDG盤、2・3番もDG盤)それぞれの違った味わいがフルヴェンならではの魅力です。
(2)トスカニーニ・NBC(1951〜52年。RCA)
ベートーヴェンと同じようにフルヴェンとトスカニーニは対称的な演奏で、造形力や様式美に優れてます。年をとるとこういうドライな演奏に惹きつけられるから不思議です。もちろんモノラル録音。
(3)ワルター・ニューヨークPO(1951〜53年。CBS) 
後年のステレオ録音とは違って、このモノラル旧盤は覇気があって構築性もあり、すばらしい演奏です。アダージョ楽章の優美さはベストに近く、オケもうまいので理想的な演奏と言えます。
(4)クレンペラー・フィルハーモニア(1956〜57年。EMI)
やや遅めのテンポでスケールが著しく大きく、これも年をとると惹きつけられる演奏です。ブラームスの陰翳がよく描かれています。
(5)ワルター・コロンビア(1959〜60年。CBS)
ワルター最晩年のステレオによる再録音で、ブラームスの交響曲の入門編と言えるでしょう。今聴くとオケが薄っぺらいのが気になりますが、それにしてもブラームスの枯れた味わいや生き生きとした音楽がここに濃縮されています。私が学生時代もっとも聞き込んだ演奏。4番は永遠の名盤。
(6)カラヤン・BPO(1964〜65年。DG)
カラヤンの最初の全集で、洗練されたオケの響きや流麗さは随一。やや急ぎ目で深みに欠ける感じがしないでもないですが、意欲的なところもあって捨てがたい魅力も。
(7)セル・クリーブランド(1966〜67年。CBS)
トスカニーニに近く、速めのきびきびしたテンポでスケール感も大きく素晴らしい演奏。ただ情感的なブラームスが聴きたい人には退屈に聞こえるかも。
(8)バルビローリ・VPO(1966〜67年。EMI)
ウィーンフィルのよさが凝縮された全集で、あまり目立たないようなのでおすすめの逸品。2番や4番は馥郁として素晴らしいです。輸入盤は廉価で買えます。
(9)ハイティンク・コンセルトヘボウ(1970〜72年。フィリップス)
優美さとオケのうまさが光る濃厚な演奏ですが、ちょっと構築性が今ひとつで説得力に欠けるような感じも受けます。
(10)ザンデルリンク・ドレスデン国立(1971〜72年。デンオン)
最初の全集で、この人らしい堅実で素朴なブラームス。職人技のようなところは目立たない魅力。派手さはなく、どの曲も完成度が高く、全集としての価値は高いです。
(11)ボールト・ロンドンPO(1970〜72年。EMI)
イギリスの大御所ボールト最晩年の録音。メニューインがコンマスとして手伝っているという伝説的な全集で、堅実な歌い回しや明るい色調が独特の全集になっていて、輸入盤は廉価なのでおすすめです。
(12)ケルテス・VPO(1973年。デッカ)
これまたバルビローリと並んでVPOの魅力を十分引き出した演奏。優美な歌い回しと構成力もあってブラームスを満喫できます。
(13)イッセルシュテット・北ドイツ放送SO。EMI ndr)
最近輸入盤でCD化されたばかりで、洗練された指揮ぶりと渋いオケの響きが魅力ですが、多少アラもあって彼の魅力を最大限に伝えるものではない印象。
(14)ケンペ・ミュンヘンPO(1975年。HM)
堅実で渋い演奏。派手さを求める人には退屈かもしれません。北ドイツ的なブラームスが味わえ、全集としても価値の高い演奏。
(15)ベーム・VPO(1975年。DG)
ウィーンフィルの魅力と堅実なベームの魅力がつまった全集の最右翼です。録音もよく、聴けば聴くほど滋味があふれてくるような名演です。とくに2番が名演です。
(16)マゼール・クリーブランド(1975〜76年。デッカ)
このオケのクリアーな響きと情感のこもった指揮ぶりが魅力ですが、彼の個性は独特で、好悪分かれそう。
(17)ヨッフム・ロンドンPO(1976年。EMI)
堅実な指揮でスケールも大きく力強さもあって貫禄のあるブラームス。どの曲も出来がよくすばらしい演奏です。
(18)ムラヴィンスキー・レニングラード(1950〜78年。SS)
全集として録音されたものではなく、ライブ録音集成で時期もばらばら(彼のライブを集めたもう1種の全集もあります)。トスカニーニ的な面を全面に押し出しながら、壮大なスケールが味わえますが、1番は録音が古いのが残念。
(19)カラヤン・BPO(1977年。DG)
カラヤン2度目の全集で流麗さは旧録と同じですが、全体的に個性に乏しい感じ。軽いわけではありませんが。
(20)ショルティ・シカゴSO(1978〜79年。デッカ)
このオケの機能性を存分に発揮したショルティらしい緻密なブラームス。響きは明るめで透明感があってその分、陰翳のあるブラームスをお求めの方には違和感があるかもしれません。
(21)バーンスタイン・VPO(1981〜82年。DG)
もっともロマンティックな濃厚さがあり、充実感もひとしお。実直なベーム盤と対称的に濃厚さでVPO盤の最右翼。すべてライブで迫力も満点。
(22)カラヤン・BPO(1986〜88年。DG)
カラヤン最晩年の録音で、流麗さとブラームスの音楽が見事に昇華してすばらしく個性的な名演になっていて、これもおすすめです。
(23)デイビス・バイエルン放送SO(1988〜89年。RCA)
流麗な演奏で自然な情感を大事にしているような演奏。スケール感もあって、どの曲もすばらしい名演です。
(24)ザンデルリング・ベルリンSO(1990年。カプリッチョ)
評論家U氏が絶賛する全集で、実直で渋い味わいは旧録以上に物々しく、優美さもあわさり彼の集大成のような印象。全集としての価値はやはり高いです。
(25)アバド・BPO(1988〜91年。DG)
明るい響きながら、彼独特のカンタービレ的なフレージングが妙に曲とマッチして新たな境地。オケのうまさもピカイチで全集として価値も高い。特に2番は名演。
(26)ジュリーニ・VPO(1991年。VPO)
ゆったりとしたテンポ感から大きなスケールが生まれ、VPOの魅力も十分堪能でき、これまた個性的な名演になっています。陰翳ゆたかな2番・4番が聴き応えがありますが、速いテンポがお好みの方にはじれったく聞こえるかもしれません。
(27)バレンボイム・シカゴSO(1993年。エラート)
遅めのテンポでスケール感が大きく充実した内容です。輸入盤は廉価で買えます。どの曲もすばらしい出来ですが、これもテンポ感がじれったく感じる方など好悪分かれそうです。
(28)ヴァント・北ドイツ放送SO(1996年。RCA)
洗練された緻密な指揮でオケの古風な響きとあわさって、これまた個性的な名演になっています。ライブでスケール感も大きく表現力もすばらしいです。ただ個性的なブラームスなのでこれも好悪分かれそうです。
(29)アーノンクール・BPO(1996〜97年。テルデック)
彼にしてはロマンティックさを重視した演奏ですが、アゴーギグやフレージングが個性的で、好悪分かれそうです。

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