ベートーヴェンの交響曲全集
2006年3月26日コメント (2)
ベートーヴェンの全集CDというのはついつい揃えたくなってしまう魔性があります(単なる病気でしょうか)。「ピアノソナタ全集」は前に書きましたので、今日は「交響曲全集」。まだまだ欲しいものがあり、中途半端ですがメモしておきます。
(1)ワインガルトナー(1936年。ウィーンPO。EMI)
録音が悪いのですが、VPOの優美な魅力と、現在につながる先進的な解釈で聴き応えがあります。とりわけ第九は名演です。
(2)メンゲルベルク(1940年。コンセルトヘボウ。フィリップス)
ライブで録音も貧しいですが、個性的なアクセントが魅力で、どちらかと言えばロマン的なベートーヴェンです。
(3)フルトヴェングラー(1948〜54年。ウィーンPO他。EMI)
主に晩年のVPO中心のもので私はBOXでなく単売(ブライトクリニックシリーズとかいう音質改善のCD)で揃えましたが、バイロイト祝祭の第九をはじめ、英雄・運命・第七などクラシック音楽史上の金字塔が目白押しで、貧しい録音を越えて精神が心をゆさぶります。また2番以外は他にも名演があり、どれを指して全集とよぶこともないと思いますし、それぞれに違った魅力があって聴く楽しみがあります(DGやターラ盤など)。
(4)トスカニーニ(1949〜52年。NBC交響楽団。RCA)
フルトヴェンが精神的・快楽的で暗さを強調しているのに対して、トスカニーニはストイックで明快さを強調している感じでしょうか(一概には言えませんけど…)。両者ともスケールが大きく優劣をつけることはもちろんできません(学生時代はこういう話題で何時間も酒席で議論したもんです)。
(5)セル(1957〜64年。クリーブランドSO。CBS)
オケが精緻でひきしまっていて、トスカニーニ型をつきつめた明快な名演。どの曲も出来不出来はなく、いつ聞いても十分満足します。
(6)クレンペラー(1957〜60年。フィルハーモニアO。EMI)
悠然としたベートーヴェンで、遅いテンポのなかから真に迫る精神性があってスケールがひときわ大きく名演です。フルトヴェングラー的な第九がとりわけ名演。
(7)シューリヒト(1957〜58年。パリ音楽院SO。EMI)
同じころのEMI企画で次のクリュイタンスとオケが入れ替わったという話をきいたことがありますが、それぞれの組み合わせが非常に面白い(逆の場合を想像しても面白いですね)。シューリヒトが例によって辛口でいながら遊び心を示しています。
(8)クリュイタンス(1957〜60年。ベルリンPO)
オケがうまく第七番第1楽章のオーボエなど各パートの美しさは光っています。フランス人指揮者ならではのテンポ感が妙にこのオケとマッチしていて、優雅な魅力があります。
(9)ワルター(1958〜59年。コロンビアSO。CBS)
これも名演揃い。LP時聞こえなかった金管のアラがCD化によって聞こえるのが残念(7番や9番)。でもワルターならではの旋律の歌い回しやスケール感は絶品です。もちろん田園が無二の名演。
(10)コンヴィチュニー(1959〜61年。ライプツィヒ・ゲヴァントハウスO。コロンビア)
数あるベートーヴェン全集のなかでもおすすめの全集。ザラっとしたオケの響きが古風で厳格で渋いベートーヴェン、テンポ感も颯爽としていて聴き飽きないし、9曲にムラもなく全集として完成度が高いです。輸入盤廉価BOXで入手しやすくなってます。
(11)カラヤン(1961〜62年。ベルリンPO。DG)
4種の全集の2回目(最初のベルリンPO)の録音。自らの手中におさめたBPOを巧みに統率し、トスカニーニ的な明快なベートーヴェンを独自の美学で演出しているところが爽やかです。とにかく速いテンポ好みの方におすすめです。
(12)シェルヘン(1965年。ルガーノ放送O。プラッツ)
怪物指揮者によるライブ録音で、足踏みの音や怒号に近い声も入った熱をおびた「とんでも演奏」、いや先進的なベートーヴェン解釈による大名演と、毀誉褒貶に満ちた不思議な魅力のある全集です。燃えたぎる度合いはフルヴェン以上で、普通の全集に聞き飽きた方におすすめします。
(13)シュミット=イッセルシュテット(1965〜69年。ウィーンPO。デッカ)
ウィーンPOの端正な魅力をもっとも生かした演奏で、激しさはない代わりに重厚かつ優美な点ではピカイチです。中庸の美学のような演奏で、第四、田園、第八などは理想的で、これも私の愛聴盤です。
(14)ベーム(1970〜72年。ウィーンPO。DG)
イッセルシュテットが優美なウィーンPOなのに対して、ベームは厳格さ、素朴さ、耽美さが強く、よりベートーヴェン的でどの曲も説得力があります。第九の第3楽章はもっとも美しい印象。
(15)カラヤン(1975〜77年。ベルリンPO。DG)
3度目の全集で、カラヤン=BPOの黄金時代の時期にあたり、カラヤン美学が徹底され、完成度も高いです。華麗でドラマティックなベートーヴェン全集。
(16)ブロムシュテット(1975〜80年。シュターツカペレ・ドレスデン。ブリリアント)
端正で渋いオケの響きが魅力的なすばらしい演奏。完成度も高くベートーヴェンを強く意識します。特に運命や田園が名演。
(17)バーンスタイン(1977〜79年。ウィーンPO。DG)
ライブ録音。フルトヴェングラーとトスカニーニを折衷したような、生命力と様式美を備えた完成度の高い名演で、一般的に推薦するなら最右翼の全集。濃厚さが充満しています。
(18)ショルティ(1986〜90年。シカゴSO。デッカ)
2種のうち新盤。オケの機能性を巧みに生かして様式美を追求した名演。スコアの読みも深くスケールも大きいですが、金管の明るめの響きは好悪分かれそう。
(19)ヴァント(1986〜1990年。北ドイツ放送交響楽団。RCA)
デジタル録音で、ドイツ的な枯れたオケの響きとヴァントならではの細部まで明快な様式美、スケールの大きさが魅力ですが、彼独自のアクセントやテンポ感で好悪分かれるかもしれません。
(20)ブリュッヘン(1984〜92年。18世紀O。フィリップス)
古楽器によるライブ全集。今まで聴いたことのない古楽器の響きやバランス感覚が魅力的ですが、それだけに終わらずスコアの読みが深くて、個性的なテンポ感やアクセントに満ちつつスケールも大きく、聴き応えがあります。
(21)アバド(1985〜88年。ウィーンPO。DG)
ライブ録音。トスカニーニ的な様式美のなかにアバドならではのカンタービレが独特で、歌い回しやアクセントで好悪分かれそうですが、ウィーンPOの熱演に聴き応えがありますが、曲によって期待に反して平凡だったりする印象もあります。
(1)ワインガルトナー(1936年。ウィーンPO。EMI)
録音が悪いのですが、VPOの優美な魅力と、現在につながる先進的な解釈で聴き応えがあります。とりわけ第九は名演です。
(2)メンゲルベルク(1940年。コンセルトヘボウ。フィリップス)
ライブで録音も貧しいですが、個性的なアクセントが魅力で、どちらかと言えばロマン的なベートーヴェンです。
(3)フルトヴェングラー(1948〜54年。ウィーンPO他。EMI)
主に晩年のVPO中心のもので私はBOXでなく単売(ブライトクリニックシリーズとかいう音質改善のCD)で揃えましたが、バイロイト祝祭の第九をはじめ、英雄・運命・第七などクラシック音楽史上の金字塔が目白押しで、貧しい録音を越えて精神が心をゆさぶります。また2番以外は他にも名演があり、どれを指して全集とよぶこともないと思いますし、それぞれに違った魅力があって聴く楽しみがあります(DGやターラ盤など)。
(4)トスカニーニ(1949〜52年。NBC交響楽団。RCA)
フルトヴェンが精神的・快楽的で暗さを強調しているのに対して、トスカニーニはストイックで明快さを強調している感じでしょうか(一概には言えませんけど…)。両者ともスケールが大きく優劣をつけることはもちろんできません(学生時代はこういう話題で何時間も酒席で議論したもんです)。
(5)セル(1957〜64年。クリーブランドSO。CBS)
オケが精緻でひきしまっていて、トスカニーニ型をつきつめた明快な名演。どの曲も出来不出来はなく、いつ聞いても十分満足します。
(6)クレンペラー(1957〜60年。フィルハーモニアO。EMI)
悠然としたベートーヴェンで、遅いテンポのなかから真に迫る精神性があってスケールがひときわ大きく名演です。フルトヴェングラー的な第九がとりわけ名演。
(7)シューリヒト(1957〜58年。パリ音楽院SO。EMI)
同じころのEMI企画で次のクリュイタンスとオケが入れ替わったという話をきいたことがありますが、それぞれの組み合わせが非常に面白い(逆の場合を想像しても面白いですね)。シューリヒトが例によって辛口でいながら遊び心を示しています。
(8)クリュイタンス(1957〜60年。ベルリンPO)
オケがうまく第七番第1楽章のオーボエなど各パートの美しさは光っています。フランス人指揮者ならではのテンポ感が妙にこのオケとマッチしていて、優雅な魅力があります。
(9)ワルター(1958〜59年。コロンビアSO。CBS)
これも名演揃い。LP時聞こえなかった金管のアラがCD化によって聞こえるのが残念(7番や9番)。でもワルターならではの旋律の歌い回しやスケール感は絶品です。もちろん田園が無二の名演。
(10)コンヴィチュニー(1959〜61年。ライプツィヒ・ゲヴァントハウスO。コロンビア)
数あるベートーヴェン全集のなかでもおすすめの全集。ザラっとしたオケの響きが古風で厳格で渋いベートーヴェン、テンポ感も颯爽としていて聴き飽きないし、9曲にムラもなく全集として完成度が高いです。輸入盤廉価BOXで入手しやすくなってます。
(11)カラヤン(1961〜62年。ベルリンPO。DG)
4種の全集の2回目(最初のベルリンPO)の録音。自らの手中におさめたBPOを巧みに統率し、トスカニーニ的な明快なベートーヴェンを独自の美学で演出しているところが爽やかです。とにかく速いテンポ好みの方におすすめです。
(12)シェルヘン(1965年。ルガーノ放送O。プラッツ)
怪物指揮者によるライブ録音で、足踏みの音や怒号に近い声も入った熱をおびた「とんでも演奏」、いや先進的なベートーヴェン解釈による大名演と、毀誉褒貶に満ちた不思議な魅力のある全集です。燃えたぎる度合いはフルヴェン以上で、普通の全集に聞き飽きた方におすすめします。
(13)シュミット=イッセルシュテット(1965〜69年。ウィーンPO。デッカ)
ウィーンPOの端正な魅力をもっとも生かした演奏で、激しさはない代わりに重厚かつ優美な点ではピカイチです。中庸の美学のような演奏で、第四、田園、第八などは理想的で、これも私の愛聴盤です。
(14)ベーム(1970〜72年。ウィーンPO。DG)
イッセルシュテットが優美なウィーンPOなのに対して、ベームは厳格さ、素朴さ、耽美さが強く、よりベートーヴェン的でどの曲も説得力があります。第九の第3楽章はもっとも美しい印象。
(15)カラヤン(1975〜77年。ベルリンPO。DG)
3度目の全集で、カラヤン=BPOの黄金時代の時期にあたり、カラヤン美学が徹底され、完成度も高いです。華麗でドラマティックなベートーヴェン全集。
(16)ブロムシュテット(1975〜80年。シュターツカペレ・ドレスデン。ブリリアント)
端正で渋いオケの響きが魅力的なすばらしい演奏。完成度も高くベートーヴェンを強く意識します。特に運命や田園が名演。
(17)バーンスタイン(1977〜79年。ウィーンPO。DG)
ライブ録音。フルトヴェングラーとトスカニーニを折衷したような、生命力と様式美を備えた完成度の高い名演で、一般的に推薦するなら最右翼の全集。濃厚さが充満しています。
(18)ショルティ(1986〜90年。シカゴSO。デッカ)
2種のうち新盤。オケの機能性を巧みに生かして様式美を追求した名演。スコアの読みも深くスケールも大きいですが、金管の明るめの響きは好悪分かれそう。
(19)ヴァント(1986〜1990年。北ドイツ放送交響楽団。RCA)
デジタル録音で、ドイツ的な枯れたオケの響きとヴァントならではの細部まで明快な様式美、スケールの大きさが魅力ですが、彼独自のアクセントやテンポ感で好悪分かれるかもしれません。
(20)ブリュッヘン(1984〜92年。18世紀O。フィリップス)
古楽器によるライブ全集。今まで聴いたことのない古楽器の響きやバランス感覚が魅力的ですが、それだけに終わらずスコアの読みが深くて、個性的なテンポ感やアクセントに満ちつつスケールも大きく、聴き応えがあります。
(21)アバド(1985〜88年。ウィーンPO。DG)
ライブ録音。トスカニーニ的な様式美のなかにアバドならではのカンタービレが独特で、歌い回しやアクセントで好悪分かれそうですが、ウィーンPOの熱演に聴き応えがありますが、曲によって期待に反して平凡だったりする印象もあります。
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