ニコラーエワのJSバッハ「平均律クラヴィーア曲集」全曲
JSバッハの「平均律クラヴィーア曲集」全曲はベートーヴェンのソナタ全曲と同じくらい味わい深いものがあり、旧約聖書と新約聖書の比喩は言い得て妙です。
平均律の聴き比べはこれからぼちぼちですが、今夜はニコラーエワの平均律(1984,85年。デジタル録音。今市市民ホール。メロディア)を聴きました。現代ピアノの特性を生かし、強弱や響きをたっぷりきかせた味わい深いバッハで、リヒテルのような激しさや瞑想的な部分がないかわりにバッハの真髄にせまるかのようで、また録音がいいのも特徴です。

今まで聴いた全曲を振り返ると、
ヴァルヒャ(EMI・アルヒーフ新旧2種。Cemb)…両方ともイチオシでバッハ自身が彼の身体に乗り移って弾いているような精神性に富んだものです。
ランドフスカ(RCA。Cemb)…古い演奏でチェンバロの響きに好悪分かれそうですが、彼女の敬虔なバッハ像が際だっていて聴き応えがあります。
フィッシャー(EMI。pf)…ベートーヴェンソナタ全集で言うとシュナーベルと同じ位置にある歴史的名演。モノ録音でアラもあるので万人向けではありませんが、この曲集を語るうえで欠かせない存在です。
グールド(CBS。pf)…奇才グールドの才能を示したもので、ピアノをチェンバロ的に弾いたり、響きを残したり、いろいろな発見のある演奏です。
リヒテル(メロディア。pf)…現代ピアノの特性を生かした演奏で、彼らしいオリジナリティに富んで、緩急の差が激しく、巨人らしい解釈が面白いです。
グルダ(フィリップス。pf)…ピアノによる演奏では最も万人向けでベートーヴェンのソナタ全集で言うとバックハウスの位置にあるものです。正攻法で品があって音もきれいでバッハを強く感じる名演です。
シフ(デッカ。pf)…現代ピアノならではの響きを生かし、彼のオリジナルの装飾音など示唆に富む演奏で、グールドとは対極にあるような工夫としなやかさを感じます。丁寧で録音も優秀です。
ヒューイット(ハイペリオン。pf)…非常に丁寧かつ深みのある演奏でバッハを強く感じる名演です。

コメント

stella
stella
2006年2月1日23:29

ヴァルヒャはチェンバロですか?
奏さんのコメントを読んで、グルダとヒューイットのが欲しくなりました。
キースの平均律のコメントも書いて欲しいな。

奏(かなで)
奏(かなで)
2006年2月2日18:44

ヴァルヒャの旧盤(EMI)はアンマーチェンバロというピアノみたいに大きなチェンバロで甘い音と強弱の変化が特徴です。かつてはバッハの録音の集大成の「ヴァルヒャの芸術」が出ていたのですが廃盤のようで中古店でもあまり見かけませんがまとまっていて20世紀の遺産という感じでした。
新盤(アルヒーフ)は第1巻がJリュッカース、第2巻がエムシュという歴史的なチェンバロで録音しています。新旧とも甲乙つけがたく、どちらもイチオシです。
グルダ、ヒューイットとも丁寧で品のある演奏ですよ。
キースはまだ聴いてないんです。今度探してみます。

nophoto
gkrsnama
2010年2月13日0:54

平均率はピアニストの特性が出て面白いですねえ。グルダとグールドは運動感。リヒテルは単声音楽見たいに聞こえベートーベンみたい。ニコライエワとシフは歌に満ちた対位法(シフはニコライエワに教わっていたはず)。
冥府のピアニストとして有名なアファナシエフはあまりピンときませんでした。

ヒューマン(変な形容ですが)なヴァルヒャ、時計みたいなカークパトリック。
そして今一番影響力がある、ぶったまげリズムのレオンハルトとその弟子たち(もっと運動的なコープマン、優等生の鈴木雅一とロス)

こうやって数えているといっぱいかったですねえ。フーガの厳しい響きに参っているのですよ。あんな響きはあとバルトークまで聞けません。

次はニコライエワの2度目と最初の盤を買うつもりです。リヒテルのスタジオ盤もね(もっているのはモスクワとインスブルックのライブ)

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