カザドシュ
フランス人ピアニストを語る上で、コルトー、フランソワとともにカザドシュを忘れるわけにはいかない。今回集中的に聞いているので彼の往年の名演を回想したい。

ロベール・カザドシュ(1899~1972年)
澄んだ硬質の音でクリアーな表現をしつつ、ウィットに富んだ感性やざらっとした即興感やスケールの大きな表現が巨匠的風格を宿している。
ところが、CBSレーヴェルに録音された彼の多くの録音は国内盤も再発されてないようだし、輸入盤でも入手しにくい状況なのは残念。

モーツァルトのピアノ協奏曲21番、22番、23番、24番、26番、27番の6曲(3CD)。セル指揮クリーブランド管弦楽団他の演奏(1959~62年)。
暖かい音で曲のよさを大事にしたような名盤で、セルの伴奏も非常にすばらしい。ただ今となっては録音が古く、ピアノの音質がよくない。

シューマン
蝶々、交響的練習曲、森の情景の3曲(1960年)。
蝶々は速いテンポで颯爽とした感じであるが、テンポのアゴーギグはちょっと一本調子のところも。森の情景もさらっとした印象で曲のよさを伝えている。メインとも言える交響的練習曲はスケールの大きな演奏で、歯切れのよさからホロヴィッツの演奏?と聞き違えるような印象。途中少しあらがある。

サン=サーンスのピアノ協奏曲4番&フォーレのバラード
バーンスタイン指揮ニューヨークフィルの演奏(1961年)。
特にサン=サーンスはすばらしい名演。フランス的な繊細さとこの曲特有の迫力が見事に昇華されている。何より歯切れのよいピアノがバーンスタインののりのいいバックに力負けせず対抗しているところがいい。名盤である。あとフォーレの前奏曲3曲がおまけで入っており、これもニュアンスに富んだ演奏。

フランクの交響変奏曲、ダンディのフランス山人の歌による交響曲、ラヴェルの左手のための協奏曲
オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏(1959、60年) 。
いずれもウィットに富んだフランス的な感性を出しつつ、構成的にはしっかりしている。ピアノは歯切れよく、響きは小さめで混濁感はないのが私の好み。ただフィラデルフィアのバックがちょっと荒いのが残念。

ラヴェルのピアノ独奏曲全曲(1951年。2CD)
モノラル録音ながらクリアーで音質はいい。何よりフランス的なエスプリに満ちたラヴェル演奏は稀少で、これが世界最古のラヴェル全集だったとは耳を疑う。ギーゼキングの3年前にあたる。鏡、クープランの墓、夜のガスパール、水の戯れ、などなど、どの曲も技巧的に問題なく歯切れのよいガラス細工のような演奏。響きを大事にしてペダルを多用しないところが好感もてる。即興的なフランソワの演奏に比べると、入念でベテランの味。録音もよいし、すばらしい名盤。

ドビュッシー「小組曲」、サティ「梨の形をした3つの小品」、フォーレ「ドリー組曲」他(ギャビー・カザドシュと4手演奏。1959年)
初期ステレオ録音の時代であるが、鮮明な録音。何より演奏はすばらしいの一言。カザドシュ夫妻の連弾や4手演奏は当時非常に人気があったことはこのCDを聴けば納得できる。繊細にして優雅、フランスのしゃれた味わい、何よりデュオの息がぴったりあってること。特にフォーレが名演。

フランク&フォーレのヴァイオリンソナタ
フランチェスカッティのヴァイオリン独奏(1953年)。モノラル録音であるが音質はいいほう。コルトー、ティボーの名盤に匹敵する存在。フランチェスカッティの柔らかな音質とクリアーなカザドシュの伴奏はこれらの曲にちょうどあっている。フランクの1楽章の冒頭を聞くだけで彼らのすばらしさを実感できる。
1990年代前半、東芝EMIは膨大なクラシック音源から巨匠たちの録音を集成したBOX入りCDを続々リリースしました。CD1枚の単価が2500円前後なので当時私は買える資金もありませんでしたが、その後、中古店やヤフオクなどで少しずつ集めはじめてたら、けっこうな量になりました。どれもやはり往年の巨匠の至芸を堪能できるものばかりですが、通常では入手しにくい廃盤ばかりでコレクター魂に火がつきます。せっかくなのでそれぞれコメントしておきます。

「リパッティの芸術」(CD8枚組)
私は単発で集めました。どれも名演です。陰のない健全な演奏という印象で、テクニックも優れ、ショパンのワルツやソナタ3番、シューマン・グリーグの協奏曲などどれも聴き応えがあります。また生前最後のブザンソンライブも収録され命を燃焼させたような演奏は涙なしには聞けません。ちなみにライブのバッハ・リスト・バルトーク3番の協奏曲は未収録です。

「コルトーの芸術」(CD5枚組)
ショパン演奏を集成したもの。ノイズは少な目で高音のきらめくような音はむしろ胸に迫ります。とりわけ前奏曲やバラードは今のピアニストでは聞くことの出来ない感性に圧倒されます。

「コルトーの芸術第2集」(CD8枚組)
ショパン以外の作品(シューマン・サンサーンス・ドビュッシー・ラヴェルなど)を集成したもの。これも聴き応えのある演奏が多く、何度となく愛聴してます。シューマンの謝肉祭やダヴィド同盟舞曲集、ドビュッシーの前奏曲あたりは最高の演奏。またミュンシュ指揮のサンサーンスの4番協奏曲やフランク「前奏曲、コラールとフーガ」も心を打つ名演です。

「ヴァルヒャの芸術」(CD13枚組)
ステレオ録音。アンマーチェンバロによる甘い音。とにかくバッハ最良の遺産です。平均律はアルヒーフ盤と聴き比べができます。一言で評するならば「バッハ自身がのりうつったような説得力のある演奏」です。いずれもテンポは遅めながら、盲目の方特有の鋭敏な音楽的感性には宗教的な威厳すら感じます。

「シュバイツァーの芸術」(CD3枚組)
昨日の日記で詳細を書きました。SP復刻でノイズは少ない方。精神的なバッハの至芸です。テクニックでアラもありますが、精神的な面で圧倒されてしまう演奏です。

「ミケランジェリの芸術」」(CD3枚組)
モノラル録音時の記録を集成したもの。ブラームスのパガニーニ変奏曲など鮮やかな技巧に舌を巻きます。

「ギーゼキングの芸術1モーツァルト篇」(CD8枚組)
ソナタ全曲およびピアノ小品全集(連弾を除く)。一切ペダルを使用しない指のニュアンスだけで表現した演奏。新即物主義とよばれた楽譜に忠実な解釈はクールな感じがしてモーツァルトの古典的様式を峻厳に演奏したかのようで必聴の名演です。

「ギーゼキングの芸術2ベートーヴェン篇」(CD6枚組)
未完に終わったベートーヴェンのソナタ全集録音。1~14,15(4楽章除く),17~21,23,30,31番という22曲。後期の曲が少ないのが残念。力強いタッチはよいとして、気乗りがしなかったのか彼自身編集にこだわらなかったのか、アラがけっこう多い。

「ギーゼキングの芸術3シューベルトほか篇」(CD6枚組)
ロマン派の小品の演奏を収録。特に優れているのはシューベルトの即興曲・楽興の時、メンデルスゾーンの無言歌集(17曲抜粋)、グリーグの抒情小曲集(31曲抜粋)、シューマンの謝肉祭。力強いタッチと巨匠的解釈が聴ける。新即物主義というより心から曲を慈しんで演奏している印象。ブラームスの小品はアラが多い。

「ギーゼキングの芸術4ドビュッシー篇」(CD6枚組)
ドイツ人ながらフランス生まれだからか、同時代の作品を真摯にとらえたからか、ギーゼキングのドビュッシー演奏はすばらしい演奏となっている。ステレオ時代のミケランジェリによるガラス細工のような演奏とは好一対で、モノラル録音ながら一音一音ニュアンスが伝わってくるような繊細な演奏。EMIのギーゼキング録音は上記4つのBOXに全て収録されているようで、ラヴェル録音やバッハなど一部の演奏はなぜか未収録です。

「カザルスの芸術」(CD10枚組)
SP復刻はまあまあでノイズはそう気になりません。チェロの巨匠カザルスの太く甘い音と精神的な音楽を聴けるBOX。バッハ無伴奏をはじめ、室内楽(コルトー・ティボーら)、ドヴォルザークなどの協奏曲、どれも偉大!。

「デュプレの芸術」(CD17枚組)
ドヴォルザーク・エルガーをはじめ主なチェロ協奏曲、ベートーヴェンのピアノトリオやチェロソナタ(バレンボイムら)などの名演(全てステレオ録音)ばかり彼女の全録音が収録されてます。最近輸入盤でコレクションが発売されましたが、こちらに収録されている特典盤のバッハなどは未収録のようです。

「クライスラーの芸術」(CD11枚組)
ベートーヴェンのヴァイコンがとにかく名演。自作自演の小品集も貴重ですが、SP復刻はややノイズが多い。RCA録音は同じようなBOXが出てきます(CD8枚組)。

「ティボーの芸術」(CD10枚組)
SP復刻は小品集あたりかなりひどい印象。でもフォーレやフランクのソナタ(コルトー伴奏)など幻想的で素晴らしい名演。ティボーには他にフィリップスでも晩年の録音の集成があります(CD4枚組)。

「デ・ヴィートの芸術」(CD11枚組)
フルトヴェングラーとの共演で知られる戦前ドイツで活躍した女流ヴァイオリニストです。モノラル録音が多いですが比較的聴きやすい。バッハやロマン派の協奏曲、ブラームスのソナタ(フィッシャー伴奏)など名演多数。

「マルツィの芸術」(CD6枚組)
同じく女流ヴァイオリニスト。全てモノラル録音。あまり話題にならないが、彼女の繊細かつスケールの大きな解釈はヴァイオリン音楽を語るうえで外せません。とりわけバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータとソナタ」は名演です。

「ヌブーの芸術」(CD3枚組)
ベートーヴェンやシベリウスの協奏曲など超名演を残しながら早世した女流ヴァイオリニストです。彼女の貴重な名演がCD3枚で収録。全てモノラル録音。私は単発で揃えました。最近輸入盤でEMI以外の録音を含めたCDが出て一部収録が重なります(CD4枚組)。

「ブッシュの芸術」(CD17枚組)
ブッシュ四重奏団のベートーヴェンやシューベルト、ブラームスなど室内楽の名演集。特にゼルキンを加えたブラームスの室内楽の名演が聴き応えがある。ノイズは気になりませんが、もう少し鮮明な音がほしい。

「カペー四重奏団の芸術」(CD6枚組)
ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲やドビュッシー、ラヴェルなどどれも含蓄があって素晴らしい。ノイズは少ないほう。

「ワルターの芸術・ウィーンフィル編」(CD14枚組)
ワルターが戦前のウィーンフィルを振った録音を収録したもの。ハイドンの軍隊、モーツァルト、田園、未完成、ブラームス、マーラー9番などの交響曲の魅惑に満ちた甘美な演奏ばかり。ノイズは気になりません。

「シューリヒトの芸術」(CD3枚組)
ウィーンフィルによるブルックナー交響曲3・8・9番(ステレオ録音)で、とにかく9番は永遠の名演です。単発で揃えました。

「カラスの芸術」(CD13枚組)
モノラル〜ステレオ録音。さまざまなアリアの集成で、私は輸入盤で揃えました。
シュバイツァーのバッハ
アルベルト・シュバイツァー(1875〜1965年。独)はノーベル平和賞を受賞した医師として著名ですが、一方でオルガンの達人でもあり、バッハのオルガン譜の校訂や「バッハ伝」の著作があることでも知られています。

志鳥栄八郎氏の著作で、バッハのオルガン曲の推薦盤としてヴァルヒャやリヒターとともにシュバイツァーが挙げられ、「体が熱くなるような感動を覚える」「精神の豊かさにひかれる」「人間性の伝わってくるような大らかで心の暖まる演奏」という評を学生時代に読んで以来、気になってましたが、なかなか入手できませんでした。

最近バッハにはまるなか、ヴァルヒャらの正統派の演奏とは違う演奏を期待し、ようやく「シュバイツァーの芸術」(EMI。3枚組)をヤフオクで入手できました。1935〜6年のSP復刻で、ノイズは少ないほうですが、オルガンの深みのある響きの広がりはもちろんないです。ただその録音の悪さがかえって一種幻想的な音色になっているようにも思いました。
演奏はテクニック的に甘いところもあり(当時の修正皆無の一発本番のような録音だったのでしょう)、ヴァルヒャらの後代の様式とは違うテンポ感やアゴーギグもみられ非常に興味深いです。

例えば有名な「トッカータとフーガ ニ短調」BWV565の冒頭はかなり速く、その後テンポはかなり変動して主題はやや遅めといった具合です。
「大フーガ」BWV542や「小フーガ」BWV578は、何よりラストに向けて盛り上がる構成力やフーガの処理がすばらしく、志鳥氏の言う「心が熱くなる感動」を味わえました。テクニック的な面で現在の評論家はほとんど顧みないのでしょうけど、これはたしかに名演です。
バッハのゴールドベルク変奏曲
バッハ・シリーズ第3弾で、人気曲「ゴールドベルク変奏曲」BWV988です。ニ長調の明朗な旋律を主題とし、30もの対位法的手法でさまざまな性格の変奏にしあがり、まさに変奏曲の王様。バッハはこれを不眠症に悩むカイザーリンク伯(バッハの弟子のゴールドベルクが仕える)のために作曲したという有名なエピソードが嘘のように1時間近い演奏時間が退屈しない。最晩年の傑作です。

(1)ランドフスカ(1934,EMI。cemb.)…世界初録音。ドイツ的なバロックの流れを汲む構成感や表現力は今聴いても全く古びていません。歴史的名演奏にしてSPによるこの曲の代表的録音。

(2)アラウ(1942,RCA。pf)…万全な技巧によるドイツ的で立派な演奏なのに、録音が貧しいのが残念。ランドフスカがRCAに録音したので久しくお蔵入りになった幻の録音(ちなみにRCA復刻盤よりフィリップスのBOX盤のほうがノイズが少ない)。

(3)ランドフスカ(1945,RCA。cemb)…再録音。ただチェンバロ自体の音が独特すぎて好悪分かれそう。EMI盤のほうがおすすめ。

(4)グールド(1955,CBS。pf)…グールドのデビュー盤にして強烈な個性で彼の名がメジャーになった代表的録音。ノンレガートによる独特のタッチや、スリリングな技巧など現在も価値を失っていない。学生時代初めて聴いた時の驚きは今も忘れていない。

(5)ヴァルヒャ(1961,EMI。cemb)…アンマーチェンバロによる甘い音の響き。バッハが乗り移ったかのような威厳と説得力をもった精神的な演奏で、すばらしいの一言。

(6)ピーター・ゼルキン(1966,RCA。pf)…やや遅めのテンポながら明晰かつ個性的なピアニズムで聴きどころが多い。なお父ゼルキンはアリアの主題だけ録音している(CBS盤)。

(7)ユージナ(1968,メロディア。pf)…リヒテルが「グールドもユージナに比べればかわいいものだ」と述べたことで知られる女流ピアニスト。彼女の個性は鮮烈で、独特のテンポ感とピアニズムに快感を覚えるほど。この曲の異形さで言えばグールドと双璧。

(8)ケンプ(1969,DG。pf)…ドイツの大家ではゼルキン・バックハウスとも録音しなかったのでケンプの一枚は非常に貴重(おまけにバッハでもまともな録音は少ない)。暖かな表情のするバッハ演奏で、装飾音の扱いはやや現在と異質で淡白ながら、説得力のある演奏。

(9)リヒター(1970,アルヒーフ。cemb)…バッハ演奏の大家によるチェンバロ演奏。堅固な構成で学究的な印象。

(10)レオンハルト(1976,HM。cemb)…リヒターより自由な印象ながら非常に丁寧で表情づけも豊かなので聴き応えがある。

(11)ニコラーエワ(1979,メロディア。pf)…現代ピアノの性能を生かした豊かな響きによるバッハ。ロマンティックな印象。

(12)ピノック(1980,アルヒーフ。cemb)…チェンバロ演奏ではヴァルヒャと双璧の感がある名盤。がっしりした構成で典雅なチェンバロの響きが印象的。これも万人向けでおすすめ。

(13)グールド(1981,CBS。pf)…同曲でデビューしたグールドが人生の最後にまたこの曲を録音したことが興味深い。旧盤よりも全体にゆったりとしたテンポで、瞑想的な表現やデリケートな演奏が印象的。スタジオで録音風景を撮影した映像もDVD化されており貴重。

(14)シフ(1982,デッカ。pf)…軽妙なスタイルで装飾音が独自であるが、構成感がしっかりして速めでスリリングなところが聴き所。グールドのノンレガートな演奏と好一対。

(15)ティーポ(1986,EMI。pf)…イタリアの女流で、非常に細やかな表情づけやピアノの響きを大切にした演奏で、健康的なバッハ。学習者におすすめしたい。

(16)バレンボイム(1989,エラート。pf)…ブエノスアイレスでのライブで、ホールの響きがよくテクニックも万全。明るく健康的な印象でおすすめ。そう遅くは感じないのになぜかCD2枚組。

(17)ガブリーロフ(1992,DG。pf)…彼特有のパワフルさは控えめで、優しく響きを大切にした演奏。どちらかと言うとノンレガート気味で軽妙な印象。

(18)テューレック(1998,DG。pf)…グールドに影響を与えたカナダの女流奏者で、バッハを得意とし、数種あるゴールドベルクの録音のこれは最後の録音。80歳の時の録音ながらテクニックは問題なく、たっぷりとしたテンポで一音一音を大切にした演奏で、細やかでロマン的な表情が印象的。なおCDは2枚組。

(19)ベルダー(1999,ブリリアント。cemb.)…155枚BOXの1枚。調弦が低めなのがびっくり。健全で安定した演奏で、装飾音がやや自由な趣き。

(20)ペライア(2000,CBS。pf)…ガラス細工のようなきらめくような響きが印象的。ゆったりとしたテンポで丁寧な演奏。

(21)ヒューイット(2000,ハイペリオン。pf)…彼女はバッハのクラヴィーア曲のほとんどを録音し、オーソドックスなタッチによる丁寧で深みのある演奏が多いなか、ゴールドベルクの録音はかなり個性的な面が伺える。リピートのたびに表情を変えたり大胆にテンポを動かしたり、好悪分かれそう。

(22)ラクリン・マイスキー・今井信子(2006,DG。シトコヴェッキーによる弦楽三重奏版)…珍しい室内楽編曲版。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの弦楽器で持続音が重なるところが実に美しく、編曲も楽曲に忠実。私は東京ライブで実演を聴いたが、最後のアリアに戻ったあと照明が全て消えてホールが闇に包まれたところは鳥肌物でした。また第25変奏アダージョの遅さは異例で非常に瞑想的で聴き応えがある。

バッハの平均律

2007年6月26日
バッハの平均律
バッハのクラヴィーア曲集シリーズで、第2弾です。
「平均律クラヴィーア曲集」は巨大なバッハの作品で各巻24曲ずつ全ての調性で書かれたプレリュードとフーガから成ります。
以下に挙げるのは全2巻の全曲録音のみです。昨年にも日記で平均律を取り上げましたが、その後最新録音含めてあれこれ聴きまくりましたので、まとめておきます。

(1)フィッシャー(1936,EMI。pf)…ベートーヴェンソナタ全集で言うとシュナーベルと同じ位置にある歴史的名演。モノ録音でアラもあるので万人向けではありませんが、この曲集を語るうえで欠かせない存在です。曲によって表情を変え、ペダリングを生かしてロマンティックな面もあって独特のバッハで、聴き飽きません。

(2)ギーゼキング(1950,DG.pf)…新即物主義の彼らしく楽譜に忠実に一気呵成に弾いた印象。放送録音なのでアラも一部見られますが立派な演奏です。フィッシャーに比べると堅い印象ですが、ノンペダルの演奏は技巧的に感心します。

(3)テューレック(1953,DG。pf)…カナダ出身の女流ピアニストで畏敬をこめたバッハ像がエキセントリックながら迫真に迫るような感じ。グールドに影響をあたえたことでも知られています。私が聴く限り1番ハ長調プレリュードはもっとも遅い演奏。

(4)ランドフスカ(1954,RCA。Cemb)…古い演奏でチェンバロの響きに好悪分かれそうですが、彼女の敬虔なバッハ像が際だっていて聴き応えがあります。ただチェンバロの癖のある古びた音の響きが人によって好悪分かれそう。

(5)ヴァルヒャ(1961EMI。Cemb)…旧録音。チェンバロ演奏ではイチオシで、バッハ自身が彼の身体に乗り移って弾いているような精神性に富んだものです。どの曲も説得力があります。アンマー社製チェンバロの音に暖かみが感じられます。テンポはどれも遅めです。

(6)グールド(1971,CBS。pf)…奇才グールドの才能を示したもので、ピアノをチェンバロ的に弾いたり、響きを残したり、いろいろな発見のある演奏です。スリリングでやたらと速いと思えば、瞑想的なフーガがちょっと遅すぎたり、ロボットが弾いてるようなスタッカートの弾き方でも好き嫌いに分かれそう。

(7)園田高弘(1972,デンオン。pf)…堅固な構成で立派な演奏です。抑制のきいた知性的なバッハで、緩急の差も少なく淡々と弾いていますが冷たくはありません。テンポは遅すぎず早すぎずという感じで中庸です。

(8)グルダ(1973,フィリップス。pf)…ピアノによる正攻法の演奏ですが、独自の装飾音は彼の自作の曲を彷彿とさせ、やはりグルダの個性が感じられる録音です。テンポは中庸で遅すぎたり速すぎたりはありません。

(9)リヒテル(1973,メロディア。pf)…現代ピアノの特性を生かした演奏で、彼らしいオリジナリティに富んで、緩急の差が激しく、巨人らしい解釈が面白いです。バッハというよりリヒテルのスリリングさやスケールの大きさを聴く演奏。プレストの曲ではテンポは最速かもしれませんが、アダージョは逆に人一倍遅かったりします。

(10)レオンハルト(1973,HM。cemb.)…ヴァルヒャとならぶチェンバロ演奏のおすすめ。学究的な印象ですが冷たい感じはなく、淡々と弾いているようで非常に説得力があり、曲による表情の変化も巧みです。テンポはやや速めです。

(11)ヴァルヒャ(1974,アルヒーフ.cemb)…2度目の全曲録音。第1巻はリュッカース、第2巻はエムシュを使用。演奏様式で旧録音と大きな差はありませんが、ニュアンスや表情づけはより自由で柔軟な感じがして大家風の演奏です。

(12)ルイ・ティリ(1977,アリオン,オルガン演奏)…オルガンによる珍しい平均律演奏。これがまた美しい!オルガンというよりリコーダーの合奏のような爽やかなハーモニーもあれば、フーガでは荘重な雰囲気が抜群。テンポ感もかなり颯爽としていて聴き応えがあります。

(13)シフ(1984,デッカ。pf)…現代ピアノならではの響きを生かし、彼のオリジナルの装飾音など示唆に富む演奏で、グールドとは対極にあるような工夫としなやかさを感じます。丁寧で録音も優秀です。テンポは中庸です。

(14)ニコラーエワ(1985,メロディア.pf)…日本での録音。ほぼノンペダルで重いタッチによる響きのよい演奏で、アゴーギグやダイナミックスの変化は独特。主題の声部を際立たせたり、テンポも遅めでじっくり弾いてるので学習者は参考になる。

(15)アファナシエフ(1995,デンオン。pf)…数々の異色の個性的演奏で知られるピアニストですが、多少のルバートやアゴーギグくらいで、どちらかと言えば正統派の演奏に近い。テクニックも万全でスピード感もあり、たっぷりの響きでピアニスティックなところが多くて聴き応えがあります。

(16)ヒューイット(1997,ハイペリオン。pf)…非常に丁寧かつ深みのある演奏でバッハを強く感じる名演です。シフのような軽妙さとレオンハルトのような学究肌的なものが丁度ミックスされたような、ほどよい即興性も魅力。テンポは中庸です。

(17)ベルベン(1999,ブリリアント。cemb)…155枚BOX所収。全体に速めのテンポ、ルバートが大きいところもあったり性急な感じのところも。あと録音の問題として響きがよすぎて音がこもりがちなのが残念。

(18)バレンボイム(2004,ワーナー。pf)…独特の響きの美しさ、曲ごとに大きく表情を変えるテンポ感など、非常に吟味された演奏です。よく聴くとオクターブにしたり音を変えたりしているとこもあります。フーガなど非常に遅いテンポもあり、CD枚数は最多の5枚組。

(19)アシュケナージ(2005,デッカ。pf)…響きが美しく技巧的にも完璧で現代を代表する名盤。フィッシャーが現代に蘇ったような演奏スタイルでどの曲も味のある演奏で、これまた万人向けです。テンポは速すぎず遅すぎずというところです。

バッハのトッカータ

2007年6月14日
最近バッハのクラヴィーア曲を聞きこんでるので、曲集ごとに少しずつ覚え書きを書いてみようと思う。
ピアノ好きの私の趣味では、現代ピアノで弾くバッハがやはり格別で、ピアニストの演奏スタイルに幅があって聴き比べが面白い。チェンバロ(ハープシコード)演奏はまだまだ持っているCDも少ないが併記していく。

「トッカータ」全7曲 BWV910〜917
バッハのクラヴィーア曲の様式は組曲がほとんどであるなか、この「トッカータ」は20歳代の若きバッハが技巧を前に押し出した作品で、緩−急−緩−急の構成が多く、ロマン派のピアノソナタが全楽章つながったような感じに似て、聴き応えがある。このためか、バッハ弾きで知られるヴァルヒャ、レオンハルトといった大家、あるいはシフなど全集を手がけた演奏家も録音しておらず、全7曲を録音している演奏家は下記の5人くらいで非常に寂しい限り。

(1)グールド(CBS。1965〜79年)
 最初の全曲盤。例によってノンレガートによる独自の奏法、さらに楽譜通りではない箇所もいくつか見られる。この曲集にふさわしい名技性にあふれスリリングな箇所が多い。ただグールド盤の特徴はアダージョ部分をじっくり内省的に弾くところで、人によっては「遅すぎる」と思うかもしれない。

(2)リュプザム(ナクソス。1994年)
 堅実で若々しい演奏であるが、テンポは中庸で理性的な印象。録音もこじんまりしていて今ひとつ。

(3)廻由美子(ナミ。1996年)
 ホールの響きもよくスピーディでスリリングな盛りあがりはグールド以上。現代ピアノの性能をフルに生かした感じで、様式感もしっかりしていて、トッカータ演奏を極めた逸品と言うべき名演。

(4)ヴァンデルフト(ブリリアント。1999年)
 155枚BOXの一枚。チェンバロによる全曲演奏。中庸のテンポで技巧的にもしっかりしているが、録音の問題として響きがよすぎるのか音がこもりがちなのが残念。

(5)曽根麻矢子(ワーナー。2001年)
 ロスの直弟子である彼女のトッカータはチェンバロの素晴らしい響きを堪能できる演奏で、とにかくアダージョ部分のテンポも速いのが特徴(グールドと全く反対)でその点で好悪分かれそうですが、チェンバロ演奏では一番のおすすめ。

(6)ヒューイット(ハイペリオン。2002年)
 堅実で非常にセンスのよいバッハ弾きで知られるが、このトッカータ録音に関しては彼女がノリにのって技巧的な面をみせる珍しい演奏。構築感が強くしっかりしていて万人向け。

全曲盤でない演奏で聴いたものは以下の通り。
*Eフィッシャー(ニ長調。EMI)…平均律と同じくロマンティックな面もあるバッハで、技巧的にも聴き応えがある。
*シュナーベル(2曲。EMI)…堅固な様式感によるドイツ風のトッカータ。モノラル録音が惜しい。
*ハスキル(ホ短調)…最後のトッカータはノリがよくすばらしい演奏。
*カサドシュ(ホ短調。CBS)…こちらもドイツ的な堅固な様式で、説得力のあるバッハ演奏。
*アルゲリッチ(ハ短調。DG)…スリリングで彼女らしい新しいバッハ像。独奏では彼女唯一のバッハ。
*リヒテル(ニ短調、ト長調。フィリップス)…晩年のライブ録音で一部アラも見られ、テンポも普通でスリリングさはないが、重厚なタッチが聞き物。


 

JSバッハ

2007年2月22日コメント (2)
JSバッハは本当に重厚な作品が多く、飽きっぽい性格の私も長年つきあってまったく興味が尽きることがありません。普通の楽器で弾くかピリオド楽器で弾くか、奏法を旧式にするか、鍵盤楽器をチェンバロで弾くかピアノで弾くか、はたまた校訂の問題での新解釈に基づくか、多種多様の演奏があることは、聴き比べが面白い理由だと思います。以下あくまで個人的な感想を備忘録としてまとめておきます(まだまだ聴いていない名盤がたくさんあると思いますが、それは今後のお楽しみ)。

●管弦楽組曲(4曲)
そんなに熱心に好きな曲ではないですが、重厚なリヒター盤を気に入ってます。古いバッハ像であるクレンペラー盤はずっしりとした重みのあるスケール大きな演奏。一時代前のヴィヴラートをかけた演奏ですが美しい響きのミュンヒンガー、ピリオド楽器では颯爽としているゲーベル盤、新機軸のアーノンクール盤なども聴き比べが面白いです。

●ブランデンブルク協奏曲(6曲)
よく聴くのはやっぱり3〜6番。最初に聴くべきはやはり重厚なリヒター盤でしょうが、弦楽器の超絶技巧的なゲーベル盤やレオンハルト盤(ビルスマ、クイケン、ブリュッヘンなど名手)、例によって21世紀的スタンダードなアーノンクール盤、逆に古き良き美しい響きのミュンヒンガー盤など聴き比べが面白いです。

●チェンバロ協奏曲(7曲+複数台数6曲)
あまり巨匠ピアニストは弾かない傾向。グールドによるピアノ演奏は個性的な彼らしい演奏。逆にピノック盤(チェンバロ)は華麗でおすすめ。あとEフィッシャーの1,4,5番の歴史的録音は愛聴盤。ガブリーロフやヒューイットのピアノによる演奏もいい感じ。

●ヴァイオリン協奏曲(2曲+ドッペル)
愛聴しているのはガルネリで弾いた艶やかなグリュミオー盤。ピリオド楽器ではピノック指揮スタンデイジが颯爽としている。デ=ヴィートの2番もすばらしい演奏。

●無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ・パルティータ(6曲)
独奏曲の最高峰で、個人的に練習して長年つきあっていますがフーガやシャコンヌはやはり難しい。2番のシャコンヌだけでもしっかり弾ければアマチュアでは合格?こちらは往年のヴァイオリニストが競って録音してるので聴き比べが面白く、一番のおすすめは格調の高いシェリング盤。ついでモノラル録音ながら精神性の高いシゲティ盤。他にスーク、ミルシティンあたりも好演。エキセントリックなクレーメル旧盤も面白い。ピリオド楽器ではポッジャー盤や寺神戸盤がおすすめ。オイストラフが全曲録音しなかったのが惜しまれる。

●無伴奏チェロ組曲(6曲)
これも独奏チェロ曲の最高峰で、私はヴィオラ用編曲でちまちま練習していますが、4〜6番あたりは高音が多く難しいです。
巨匠チェリストの競演に興味が尽きません。歴史的録音のカザルス盤はやはり必聴。一番のおすすめは格調高いフルニエ盤(新旧2種)。他にたっぷりとした響きのロストロポーヴィチ盤やヨーヨー・マ盤(2種)、テンポの速いシュタルケル盤やジャンドロン盤、独特の歌いまわしのマイスキー盤(2種)、ピリオド楽器ではビルスマ盤(2種)など、甲乙つけがたいです。今井信子のヴィオラ版演奏も丁寧ですばらしい演奏。

●ヴァイオリン・ソナタ(6曲)
無伴奏よりは地味な存在の曲。シェリングとヴァルヒャが豪華顔合わせで正統的な演奏でしょう。ピリオド楽器ではゲーベル盤、クイケン盤が優れています。

●ヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロ)ソナタ(3曲)
こちらも無伴奏より地味な感じの曲。あれこれ聴きましたが、ピアノ伴奏ながらシュタルケル盤とフルニエ盤がよいか。カザルスも歴史的名盤。

●フルート・ソナタ、リュート作品集、トリオソナタ
ニコレやランパルら名手による演奏が聞きごたえがあります。

●音楽の捧げもの
晩年のすばらしい曲。リチェルカーレ(フーガ)が美しい。ただ第一巻の大半が失われていたり、第二巻には子供らや弟子の追筆もあるので現存のものは構成的に弱いのが残念。
リヒター盤が正統派で実直な感じ、レオンハルト盤はピリオド楽器でこちらもオーソドックス。ミュンヒンガーはリカルチェーレも弦楽合奏で昔風ながら荘重な演奏。

●フーガの技法
これも晩年のすばらしい曲で未完なのが残念。
ヴァルヒャが正統的ですばらしい演奏。グールドもオルガンに挑戦してユニークな演奏(技巧的には弱い)。レオンハルトはチェンバロによる演奏。ミュンヒンガーは昔風のヴィヴラートたっぷりの弦楽合奏だが、なかなか荘重で気に入っている。ピアノではニコラーエワが現代ピアノの性能を生かした名演。

●オルガン曲
「トッカータとフーガ」ニ短調を初め、「オルゲル・ビュッヒライン」などなどすばらしい曲が目白押し。ゆっくり全曲聴く時間がほしい…。全集はヴァルヒャ盤2種しか持ってませんが、新盤はテンポはゆったりしてすこぶる正調。バッハが乗り移ったようなすばらしい演奏でおすすめです。

●平均律クラヴィーア曲集(2巻各24曲)
ピアノ曲の「旧約聖書」。1曲弾くのを日課にしてますが、フーガはやはり難しい曲が多いです。
ピアノ演奏では往年のEフィッシャー盤が一番好きかもしれません。ミスタッチがちょこちょこありますが、それを越える美しさ、荘厳さ、即興性など興味が尽きません。現代ピアノによるおすすめの名盤はグルダ盤と最新のアシュケナージ盤。リヒテル盤は曲によって遅すぎるように感じたり個性が強い演奏。同じ個性が強いものでは、ノンレガートのグールド盤と軽妙なシフ盤が好一対。最新のヒューイット盤やアファナシエフ盤も健闘。チェンバロではヴァルヒャ(2種)が正統派で一番おすすめ。往年のランドフスカも聴くべきところが多いけどモノラル録音で楽器の音も古風。ニコラーエワも響きがたっぷりの名演。放送録音のギーゼキングもなかなかの演奏で、一聴の価値がある。録音がよいもので正統派なのはやはりレオンハルト盤とピノック盤(チェンバロ)。

●ゴールドベルク変奏曲
変奏曲の最高峰!ただ2段のクラヴィーアで書かれているようでいくつかの変奏では右手と左手が反対になったり、重なって弾きにくいところがあり、練習しているのですがやはり難しいです。
グールド演奏が有名ですが、正統的なのはやはりチェンバロのヴァルヒャ盤が筆頭だと思います。次いでレオンハルト盤。ピアノではグールド3種あって、テンポがきびきびしているデビューの1955年盤、ライブ盤もほぼ同じテンポなのに対して晩年の最後の録音になった1981年盤はゆったりとしたテンポでこれはこれで聴き応えがあります。また独自の装飾音が多いシフ盤、繰り返しで工夫が見える正統的なヒューイット盤あたりがおすすめ。往年のランドフスカ盤やケンプ盤、Pゼルキン盤も一聴に値する演奏。アラウは録音にひずみがあって聴きにくい。グールドに影響を与えたといわれる女流テューレックの6度目のピアノ演奏(DG)も聴き応えがある。最新のペライア盤も流暢なバッハで新しいバッハ像か。

●クラヴィーア曲その他(イギリス組曲・フランス組曲・トッカータ・パルティータ、インベンション、イタリア協奏曲など)
イギリス組曲は難しい曲が多く、指使いがいつものバッハと違ういやらしさを感じます(笑)。フランス組曲は優しい感じですが1〜3番は短調で、個人的に優美な5番ト長調が好きです。トッカータは即興性を重んじる感じで若い時期のバッハの傑作ながら意外に録音が少ない。同じ傾向のパルティータのほうが録音が多い。インベンションはピアノ学習者用の練習曲のイメージが強いですが、わかりやすい旋律でよくできていると思います。イタリア協奏曲はソナタ風の颯爽とした曲で昔から大好きです。
演奏は、ピアノではノンレガートで速めのテンポのグールド盤、軽妙なシフ盤、非常に工夫された正統派のヒューイット盤がそれぞれおすすめ。チェンバロではやはりヴァルヒャ盤とレオンハルト盤になると思います。単発物ではバックハウス(フランス組曲5番など)、アルゲリッチの1枚(イギリス、トッカータ、パルティータ各2番)、ピリス(パルティータ2番など)は魅力的な名演です。珍しいところではギーゼキングの「パルティータ」全曲は名演。イタリア協奏曲は颯爽としているところでグールド、シフ、ブレンデルの他、カサドゥシュ、Rゼルキン、ブーニンがすばらしい演奏。あと個人的に好きな「イタリア風アリアと変奏曲」はヒューイットが抜群。

●4大宗教曲(マタイ受難曲、ヨハネ受難曲、ミサ、クリスマスオラトリオ)、カンタータなど合唱曲
4大宗教曲はどれも深みがあってバッハが遺した名曲の宝庫の最高級品かもしれません。往年のクレンペラーによるマタイやミサも荘厳ですばらしいです。古楽演奏の代表としてはガーディナー盤は合唱が美しい(リヒター盤の合唱は素人っぽい)いのですがテンポが速く軽い感じで一長一短。
カンタータは「主よ人の望みよ喜びよ」で有名な147番くらいしかまともに聴いていないので、今後の課題とします。リヒターの抜粋75曲をいま聴いています。
今回はお遊びで全く個人的な趣味のお話です。
全集などセット物のCDを買ってわくわくしながら初めて聴く時、何の曲から聴くかというのはある程度決まってるような気がしますので、そういう話です。理由は、一番気に入っている曲、演奏者の個性が一番出やすい曲、あるいはその曲が好きだけどなかなか理想的名演がなくて気になっている、のどれかです。

JSバッハ「管弦楽・協奏曲集」…ブランデンブルク3番
同「クラヴィーア作品集」…ゴールドベルク変奏曲
ハイドン「交響曲ロンドンセット」…100番「軍隊」
モーツァルト「6大交響曲集」…35番「ハフナー」
同「ピアノ協奏曲集」…27番変ロ長調
同「ヴァイオリン協奏曲」…5番イ長調かな
同「ピアノソナタ全集」…14番変ロ長調
ベートーヴェン「交響曲全集」…第九
同「ピアノ協奏曲」…4番
同「弦楽四重奏全集」…9番か14番
同「ヴァイオリンソナタ全集」…9番か10番
同「チェロソナタ全集」…3番
同「ピアノソナタ全集」…32番
シューベルト「交響曲全集」…9番
同「弦楽四重奏曲全集」…15番
同「ピアノソナタ集」…20番
ショパン「ピアノ作品集」…前奏曲
シューマン「交響曲全集」…3番「ライン」
同「ピアノ作品集」…謝肉祭
リスト「ピアノ作品集」…ピアノソナタ
ブルックナー「交響曲全集」…5番
ブラームス「交響曲全集」…4番
同「ヴァイオリンソナタ全集」…1番
同「ピアノ作品集」…パガニーニ変奏曲
チャイコフスキー「交響曲全集」…5番
ドヴォルザーク「交響曲全集」…9番「新世界」
マーラー「交響曲全集」…7番か8番
ドビュッシー「ピアノ作品集」…ピアノのために
Rシュトラウス「管弦楽作品集」…メタモルフォーゼン
シベリウス「交響曲全集」…7番
ラヴェル「管弦楽全集」…ラ・ヴァルス
同「ピアノ作品全集」…クープランの墓
バルトーク「管弦楽作品集」…オケコン
ストラヴィンスキー「管弦楽作品集」…春の祭典
ニールセン「交響曲全集」…4番「不滅」
プロコフィエフ「交響曲全集」…5番
同「ピアノ協奏曲全集」…3番
ショスタコヴィチ「交響曲全集」…6番か15番
同「24の前奏曲とフーガ」…24番
あくまで作曲家のピアノ曲の全集もしくはそれに準じるもののセットで比較してみました。こういう企画は評論書の類にないですね。

●JSバッハ
 クラヴィーア曲(チェンバロを含む)全集では、堅実でバッハが乗り移ったようなヴァルヒャ(cemb。EMI。ただトッカータや半音階的幻想曲とフーガなどが入っていない)、現代的な感覚ながら非常に説得力のあるレオンハルト(cemb。DHなど)、それらと対極にある新境地のグールド(pf。CBS)が大御所です。シフ(pf。デッカ。トッカータなし)は軽い感じに好悪分かれそう、ヒューイット(pf。ハイペリオン)は堅実で音の響きもいいのですが曲によっては軽い感じがします。

●ハイドン
 ソナタ全曲はチモフェーエフ(メロディア)など数種出ているようですがまだ未聴です。

●スカルラッティ
 全曲録音は未聴です。個人的にはホロヴィッツ(CBS)の数曲の録音が珠玉のような存在。

●モーツァルト
 ソナタを含めたピアノ曲全集としてはギーゼキング(EMI)がモノラル録音で淡白な印象ですがノンペダルの弾き方でモーツァルトの世界を堪能できます。
 ソナタ全集(18曲)は弾くのに喜びを感じる者ですが、何だかんだいいながらセットを買ってしまいます。録音の悪い方から言うと、評論家U野氏絶賛のクラウス旧盤(EMI)は上品で心地よい感じで確かにおすすめ。新盤(CBS)はややごつごつした感じ。ギーゼキング(EMI)は淡白で素っ気ない感じですがテクニックは抜群。ステレオ時代では、エキセントリックこのうえないグールド(CBS)はいろいろな新発見がある。ヘブラー(フィリップス)はゆったりとしたテンポのなかで大御所的な印象。
デジタル時代ではラローチャ(デッカ)と内田光子(フィリップス)が双璧。ともに細部にまでこだわった感じで、オーソドックスな演奏。

●ベートーヴェン
 ソナタを含めたピアノ曲全集というのは有名なピアニストではありません。ソナタ以外の小品(変奏曲やバガテルなど)で網羅的なものはブレンデル(ブリリアント)の5枚組のほか、主要曲ではケンプ(DG)の2枚組がおすすめです。
 ソナタ32曲は別の日記に詳細を書きました。初めて聴くならバックハウス新盤(デッカ)。テクニックを考えればバックハウス旧盤のほうが優れており、解釈はほとんど同じ。もっと録音がよいのをお望みならブレンデルとアラウのそれぞれ新盤(フィリップス)。こだわりのあるところで旧ソ連時代のグリンベルグ(メロディア)やハンガリーのAフィッシャー(フンガロトン)の二人の女流は含蓄のある演奏。あとグルダ新旧(デッカ・アマデオ)も上品でスピーディ。ケンプやバレンボイムはややテクニックが弱い(DG)。往年のシュナーベルやナット(EMI)は録音はともかく一聴に値する名演。逆に最新録音のものではアシュケナージ(デッカ)、チッコリーニ(EMI)、グード(パイオニア)など。

●シューベルト
 ソナタと「即興曲」「さすらい人幻想曲」「楽興の時」などの小品、連弾曲などを含めたピアノ曲全集はありません。ソナタとは別にケンプ(DG)、内田光子(フィリップス)あたりがおすすめ。
 ソナタ21曲の全集はケンプが往年の名盤(DG)。艶光りするような響きとドイツ的解釈が独特。対極は内田光子(フィリップス)で、内面性豊かでじっくり弾いた感のある演奏。他にシフ(デッカ)はやや軽い感じのタッチながらテクニックもありすばらしい。

●メンデルスゾーン
 ピアノ曲全集はないようです。「無言歌集」も全曲となるとバレンボイム(DG)あたりか。

●ショパン
 完全な全集はない(数人で弾いたものは存在する)けど、それに近いものならルービンシュタイン(RCA)が必携レヴェル(ただし練習曲は録音されてない)。それに次ぐのがファンタジーに富むコルトーとフランソワ(EMI)。録音がよいものではアシュケナージ(デッカ)。珍しいソナタ1番など秘曲が多いのも嬉しい。

●シューマン
 これも完全な全集はないけど、主要曲が網羅されたアシュケナージ(デッカ)が録音もよく全体の平均点が高い。往年のケンプ(DG)はドイツ的手法がうかがえ貴重。ゆったりとしたテンポのアラウ(フィリップス)もおすすめ。

●ブラームス
 全集ではカッチェン(デッカ)がおすすめで、曲によってムラはあるがテクニックは抜群で「シューマンの主題による変奏曲」など秘曲も多い。アラウ(フィリップス)は全曲ではないが、初期の作品を網羅しており、特に「ヘンデル変奏曲とフーガ」「パガニーニ変奏曲」のベスト盤。晩年の小品集ならケンプ(DG)が心をこめて弾いたような名演。

●リスト
 LP時代にクリダのすばらしい全集があった(IPG)が、CD化は待てど暮らせど実現しない。NAXOSで現在録音進行中とか。選集ではシフラ(EMI)がやはりすごいテクニックで、リストを聴いた!っていう感じ。他にアラウ(フィリップス)、ボレット(デッカ)もあるが、それぞれ網羅的ではない。

●サン=サーンス
女流マリレーヌ・ドースが録音した全集(VOX)が5枚にまとまって廉価で買える。堅実でしかもセンスのいい演奏です。

●フォーレ
 次の3種がどれもすばらしい出来。速めのテンポで颯爽としているコラール(EMI)、じっくり弾いた感じのドワイヤン(エラート)、フランス的色彩やフォーレの味わいをうまくだしたユボー(エラート)。

●ドビュッシー
 ベロフもミケランジェリも全曲録音は出しておらず、全集としてはギーゼキング(EMI)が有名ですが、モノラル録音のためドビュッシーの陰翳とかニュアンスに乏しい感じ。フランソワは録音中に急死したので全曲そろってないがこちらのほうがおすすめ(EMI)。あとデジタル録音のチッコリーニ(EMI)はゆったりとしたテンポで響きもよくすばらしい出来。

●サティ
 チッコリーニ(EMI)がニュアンスがあってすばらしい。

●シャブリエ
 これもチッコリーニ(EMI)の貴重な録音があります。

●マスネ
 これまたチッコリーニ(EMI)の選集が貴重でいい演奏です。

●セヴラック
 またまたチッコリーニ(EMI)の選集で曲ともどもすばらしい演奏です。
 
●ラヴェル
 CD2枚で全集揃うので我が家には何種類もたまってしまいましたが、一番のおすすめは奇跡の名演のようなフランソワ(EMI)。あと作曲者直伝のペルルミューテル(コロンビア)、モノラル録音ながら色彩感のあるギーゼキング(EMI)、カサドゥシュ(CBS)もすばらしい。

●プーランク
 ロジェ(デッカ)による全集がしゃれた味わいで優れています。

●グリーグ
 オピッツ(RCA)やノックレベルク(NAXOS)の全集がありますがまだ未聴です。

●シベリウス
 目立たないながら気になる作品が多いですが、全集はないようです。館野泉(キャニオン)の選集はおすすめです。

●バラキレフ
 難曲「イスラメイ」で知られていますが、最近発売されたパレイの6枚組の全集(ブリリアント)は堅実でいい演奏でした。

●グラナドス
 ドースの全集(VOX)は店頭で見かけただけでまだ未聴です。でも、この作曲家の「ゴイエスカス」など主要作品はスペインの大御所ラローチャ(デッカ)の独壇場。

●アルベニス
 これまた全集は未聴で、「イベリア組曲」などラローチャ(デッカ)による主要曲の録音で十分。

●モンポウ
 「スペインのサティ」とよばれる人で自作自演の貴重な全集(ブリリアント)があり、録音もよくまず聴くべきです。これまたラローチャ(デッカ)の主要曲の演奏(「歌と踊り」など)もあり万人向けの演奏です。

●スクリャービン
 ピアノ作品全集はポンティ(VOX)だけで、ソナタ全集2枚と小品(前奏曲・練習曲など)が5枚にまとまって廉価で買える。演奏は堅実そのものでクリアーで健康的な演奏(?)、でもまとまっているので買って損はない。ソナタ全曲(10曲)ならアシュケナージがあるものの、ホロヴィッツが残した数曲の録音(3.5.9.10番)を聴いていると迫力不足も否めない。

●ラフマニノフ
 これも完全な全集はないが、それに近いのがアシュケナージのBOX(デッカ)。2台のピアノ用まで入っていてお得。ただ曲によって出来にムラがある。

●ヒンデミット
 ソナタ3曲がCD1枚に収まったグールドの鋭利な演奏(CBS)があります。

●シェーンベルク
 グールドによるほぼ全集に近い録音(CBS。協奏曲や歌曲を含む)があり、優れています。ポリーニ(DG)もすばらしい演奏。

●ヤナーチェク
 クヴァピル(ADDA)の6枚組の全集があるようですが未聴です。フィルクシュニーの主要曲集2枚組(DG)はおすすめ。

●バルトーク
 全集はあるかもしれないけど未聴。作曲者と親交のあったシャーンドルの選集(CBS)が貴重な録音。ただしミクロコスモスがはいっていない。

●プロコフィエフ
 ピアノ曲全集のようなものは見かけない。ソナタ全曲(9曲)ならブロンフマン(CBS)の物凄い演奏があるが、ちょっと雑なところが気になる。「悪魔的暗示」あたりもっと演奏されてもいい曲。リヒテルの戦争ソナタ3曲の演奏がとびぬけて凄絶(メロディア・DG)。

●ショスタコーヴィチ
 ピアノ曲全曲録音はない。アシュケナージの「24の前奏曲とフーガ」「24の前奏曲」などの主要な曲を室内楽と共にまとめたBOX(デッカ)が昨年発売され、録音もよく非常に洗練された演奏。
●JSバッハ
 vn協…シェリング(フィリップス)…厳粛かつ美しい演奏。

●モーツァルト
 vn協(5曲)…グリュミオー(フィリップス)…ストラディヴァリの美音。vn/va協もすばらしい演奏
 p協…全集ではヘブラーと内田光子(フィリップス)。
    他にハスキル(20・23)、バックハウス(27)、ゼルキン(20〜25,27)、グルダ(20,23,25〜27番)なども好きな演奏。

●ベートーヴェン
 vn協…オイストラフ(EMI)がこの曲にぴったり。
 p協(5曲)…全集ではバックハウスとグルダ(デッカ)が筆頭。ついでポリーニ(DG)、ブレンデル(フィリップス)。バックハウスの3番1楽章はライネッケ作の長くて美しいカデンツァが見事。
 三重協…オイストラフ・リヒテル・ロストロ(EMI)がスケールが大きいが、個人的にはオイストラフ・オボーリン・クヌシェヴィキ(EMI)のほうが三人の息がぴったりで名演だと思う。

●パガニーニ
 v協(6曲)…全集となるとアッカルド(DG)。

●メンデルスゾーン
 v協…たくさん聴いたわけじゃないけどオイストラフ(CBS)とチョン(デッカ)が美音ですばらしい。

●ショパン
 p協(2曲)…ルービンシュタイン(RCA)はオケが弱いもののピアノは王者の貫禄。フランソワ(EMI)はソロがかなり個性的(それがいいんですけど)。

●リスト
 p協(2曲)…リヒテル(フィリップス)がスケールが大きくてすばらしい。

●シューマン
 p協…1曲ですが選ぶのに迷うくらい名盤が多い。ゼルキン(CBS)かリヒテル(EMI)、アルゲリッチ(DG)あたりがファンタジーを感じます。

●ブラームス
 p協(2曲)…ギレリス(DG)、ゼルキン(CBS)が個人的に好み。ポリーニ(DG)、ブレンデル(フィリップス)が次点。
 v協…オイストラフ2種(EMI)が曲にぴったりの貫禄。新しいところではヴェンゲーロフやチョンがおすすめ。往年のヌブー(フィリップス)やメニューイン(フルヴェン指揮EMI)も聴き応えがある。
 二重協…オイストラフ・ロストロポーヴィチ(EMI)がやはり重量級でおすすめ。

●ドヴォルザーク
 vc協…フルニエ(セル指揮DG)が曲にふさわしい。あとはマイスキーもすごかった。
 p協…リヒテル(EMI)しか持っていない。
 v協…オイストラフ(メロディア)しか持ってない。

●グラズノフ
 v協…オイストラフ(メロディア)がおすすめ。ロマンティックな冒頭が忘れられない。

●サン=サーンス
 p協(5曲)…全集となるとチッコリーニ(EMI)とコラール(EMI)が堅実。
 v協…3番しか知らない。全集ってあるのかなあ。3番はグリュミオーがおすすめ。
 vc協…これも1番が有名ですが2曲セットのおすすめはなし。

●チャイコフスキー
 p協(3曲)…未完の3番を加えるとギレリス(EMI)くらいしか全集は聴いたことがない。2番はそれなりにすばらしい曲。
 v協…こういう曲はハイフェッツ(RCA)の独壇場。あとオイストラフ(CBS)、チョン(デッカ)あたりがうまい。往年のフーベルマン(EMI)も聴き応えがある。

●グリーグ
 p協…1曲だけだけど、さんざん迷ってリヒテルかなあ(EMI)。あと往年のリパッティ(EMI)はさすがという感じ。

●エルガー
 vc協…デュプレ(EMI)の得意曲。

●シベリウス
 v協…これまたさんざん迷ってオイストラフ(ロジェヴェン指揮メロディア)。往年のヌヴー(EMI)はオケが貧しいけどソロがすごすぎ。

●ラフマニノフ
 p協(4曲)…全集となるとアシュケナージ(ハイティンク指揮デッカ)。2番はルービンシュタイン、3番はホロヴィッツ(RCA)。

●ラヴェル
 p協(両手と左手で2曲)…フランソワが奇跡の名演(EMI)。ト長調のほうはアルゲリッチとミケランジェリの物凄い演奏(DG)もある。

●バルトーク
 p協(3曲)…全集となるとアンダ(DG)とアシュケナージ(デッカ)。1,2番はポリーニ(DG)、3番はアルゲリッチ(EMI)もおすすめ。
 v協(2曲)…チョン(デッカ)がスケールが大きくてすばらしい。
 va協…メニューインの独壇場(EMI)。

●プロコフィエフ
 p協(5曲)…全集となるとアシュケナージ(デッカ)。3番はアルゲリッチ旧盤がもっともスリリング(DG)。フランソワも聴き応え有り(EMI)。
 v協(2曲)…全集となるとチョン(デッカ)。激しい情感がすばらしい。2番はハイフェッツが鮮やか(RCA)。

●ショスタコヴィチ
 v協(2曲)…作品を献呈されたオイストラフの独壇場(メロディア)。曲もすばらしいし演奏もスケール抜群。
 vc協(2曲)…これまた作品を献呈されたロストロポーヴィチの独壇場(メロディアに数種)。
 p協(2曲)…作曲者自作自演が2種ある。キーシンもおすすめ(DG)。
○ハイドン
104曲のドラティ盤(デッカ)もありますが、よく聴くのはパリセット(82〜90番)とロンドンセット(96〜104番)だと思います。
ロンドンセットには「時計」「軍隊」「驚愕」「ロンドン」など素晴らしい曲が含まれていて、おすすめは次の二つかな。
ブリュッヘン(フィリップス)…古楽器による演奏で堅固な構成感があります。
ヨッフム(DG)…ロンドンフィルの優しい音質がぴったり。

○モーツァルト
これも41曲のベーム盤(DG)があって古い様式のモーツァルト演奏が素晴らしいですが、曲によってテンポが遅すぎる感もあり万人向けではないかもしれません。6大交響曲(35〜41番)では、
ワルター・ニューヨークPO&コロンビア交響楽団(2種。CBS)…巨匠による素晴らしい演奏。両者とも味があります。
クレンペラー(EMI)…堅固な構成で聴けば聴くほどあじがある。
クーベリック(CBS)…メリハリが聴いて俊敏な感じ。
レヴァイン(DG)…VPOの音がすばらしい。

○ベートーヴェン(9曲)
うーん、これはしぼるのが難しい。
フルトヴェングラー(EMI)…バイロイトの第九やVPOの5・7番が魅力。寄せ集めの全集なので2番は音質悪い。
クレンペラー(EMI)…堂々としたベートーヴェン。遅い箇所も聞き慣れると感動します。
イッセルシュテット(デッカ)…VPOの美しい音質。
コンヴィチュニー…ざらっとした感触で古くて重たいベートーヴェン。
バーンスタイン…録音がよく万人向け。ただかなり個性的。

○シューベルト(9曲)
ベーム(DG)…遅いところもありますが、質実剛健。
ケルテス(デッカ)…爽やかで美しい演奏。

○シューマン(4曲)
クレンペラー(EMI)…スケールの大きなシューマン。
クーベリック(CBS)…爽やかで聞き応えあり。
セル(CBS)…オケがうまく、格調高い。
バーンスタイン(DG)…録音もよくVPOもうまい。

○ブラームス(4曲)
しぼるのが難しいですが
ワルター(CBS)…ニューヨークPOとコロンビアの2種ともすばらしい演奏
セル(CBS)…オケもうまく充実した響き。
ベーム(DG)…VPOが美しく、堅固なドイツ的
バルビローリ(EMI)…これもVPOでロマンあふれてます
ザンデルリンク(CPR)…2種あるうちベルリンSOのほう(1990年代)は録音もよく、充実した演奏です

○ブルックナー(9曲+α)
ヨッフム(EMI)…2種あるうちドレスデンのほう。堅実な演奏がひかれます
インバル(テルデック)…初稿による演奏で4番など違った味わい。9番4楽章も含む
ヴァント(RCA)…本当はベルリンフィルとの4、5、7〜9番が最高なんだけど、全集はケルンだけ。これもいい演奏です
カラヤン(DG)…ベルリンフィルのうまさが光る
バレンボイム(テルデック)…録音がよく健闘してる

○マーラー(9曲+大地の歌)
バーンスタイン(DG)…2種のうちDG盤。最高のマーラー。
シノーポリ(DG)…響きがマーラーにぴったり
アバド(DG)…録音もよくバーンスタイン盤に肉迫
ベルティーニ(EMI)…職人的な技で優れた演奏

○ドヴォルザーク(9曲)
クーベリック(DG)…スケールの大きな演奏。ベルリンフィルもうまい
ケルテス(デッカ)…語り口がうまく優しい響き

○チャイコフスキー(6曲)
カラヤン(DG)…この指揮者はドイツ物よりこういう曲のほうがあってるかも
アバド(CBS)…シカゴSOもうまいし、緻密な感じ

○シベリウス(7曲)
ベルグルンド(EMI)…3種あるうちヘルシンキSOとの演奏。この曲にぴったりの響き。新盤も透明感があって素晴らしいですが。
バルビローリ(EMI)…ざらっとした感じの音質で抒情的
マゼール(デッカ)…VPOの演奏で2番あたり奥が深い
デイビス(RCA)…2種あるうち新盤(1990年代)。華麗な感じで録音もよく、かつスケール大きい

○プロコフィエフ(7曲)
ロストロポーヴィチ(エラート)…スケール大きく録音もよい
小沢征爾(DG)…鋭敏な感じで録音もよい

○ラフマニノフ(3曲)
プレヴィン…ロマンティックでぴったり

○ヴォーン=ウィリアムス(9曲)
ボールト(EMI)…作曲者の親友。イギリス気質がよく出ている。
Aデイビス(テルデック)…録音がよく、メリハリがある

○ショスタコヴィチ(15曲)
コンドラシン(メロディア)…録音を除けば最高の演奏。スケール大きく、金管・打楽器も派手。
ハイティンク(デッカ)…西欧的ショスの響きながらどの曲も健闘
ロストロポーヴィチ(テルデック)…個性的な解釈もあるがスケールが大きい
ルドルフ・ゼルキン ディスコグラフィ
ルドルフ・ゼルキン(1903〜1991年。オーストリア→米)

強靱なタッチと軽やかなフレージング、無骨で淡白かと思えば若々しい演奏、精神性あふれるドイツ的な真髄が味わえ魅了される往年の巨匠ピアニストです。彼の長いピアニスト人生における優れた録音を不完全ですがディスコグラフィとして作成します(Lはライブ録音)。

【ヴィヴァルディ】
ヴァイオリン組曲イ長調(EMI。1931。ブッシュvn)
【ジュミニアーノ】
ヴァイオリンソナタハ短調〜シチリアーナ(EMI。1942。ブッシュvn)
【JSバッハ】
ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタト長調(EMI。1929。ブッシュvn)
ヴァイオリンソナタ ハ短調〜シチリアーナ(EMI。1933。ブッシュvn) 
ゴールドベルク変奏曲〜アリア(CBS。1976)
イタリア協奏曲(CBS。1950L)
半音階幻想曲とフーガ(CBS。1950L)
カプリッチオBWV992?CBS。1957、?BBC。1973L
ブランデンブルク協奏曲5番
 (CBS。1964。カザルス指揮マールボロ管弦楽団)
【ハイドン】
ピアノソナタ49番変ホ長調(CBS。1977L=75歳記念)
ピアノソナタ50番ハ長調(CBS。1985)
【モーツァルト】
ピアノ協奏曲第8番ハ長調K246
 (DG。1981。アバド指揮ロンドン交響楽団。以下LSO)
ピアノ協奏曲9番変ホ長調K271「ジュノーム」
 ?CBS。1956。シュナイダー指揮マールボロ祝祭管
 ?DG。1981。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲10番(2手のため)変ホ長調K365
 CBS。1962。シュナイダー指揮マールボロ祝祭管。ピーター・ゼルキンp
ピアノ協奏曲11番ヘ長調k413(CBS。1962。シュナイダー指揮マールボロ祝祭管)
ピアノ協奏曲12番イ長調K414
 ?CBS。1962。シュナイダー指揮マールボロ祝祭管
 ?BBC。1966L。シュナイダー指揮。イギリス室内管弦楽団
 ?DG。1981。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲14番変ホ長調K449
 ?EMI。1938。ブッシュ室内管
 ?CBS。1962。シュナイダー指揮コロンビア交響楽団
ピアノ協奏曲15番変ロ長調K450(DG。1981。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲16番ニ長調K451
 ?HUNT。1955L。ミトロプーロス指揮ニューヨークフィル=以下NYP
 ?DG。1981。アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団)
ピアノ協奏曲17番ト長調K453
 ?CBS。1962。シュナイダー指揮コロンビア交響楽団
 ?DG。1981。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲18番変ロ長調K456(DG。1981。アバド指揮LSO)
ピアノ協奏曲19番ヘ長調K459
 ?CBS。1961。セル指揮コロンビア交響楽団
 ?DG。1981。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲20番ニ短調K466
 ?CBS。1951。オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団=以下PO
 ?Music And Arts。1953L。カンテッリ指揮NYP
 ?CBS。1961。セル指揮コロンビア交響楽団
 ?BBC。1966L。シュナイダー指揮。イギリス室内管弦楽団
 ?THO。1978L。アバド指揮シカゴSO
 ?DG。1981。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲21番ハ長調K467(DG。1982。アバド指揮LSO)
ピアノ協奏曲22番変ホ長調K482
 ?CBS。1951L。カザルス指揮
 ?DG。1984。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲23番イ長調K488
 ?CBS。1955。シュナイダー指揮コロンビア交響楽団
 ?DG。1982。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲24番ハ短調K491(DG。1985。アバド指揮LSO)
ピアノ協奏曲25番ハ長調K503
 ?HUNT。1955L。ミトロプーロス指揮ニューヨークフィル=以下NYP
 ?DG。1983。アバド指揮LSO
ピアノ協奏曲27番変ロ長調K595
 ?RCA。1936L。トスカニーニ指揮NYP
 ?CBS。1955。シュナイダー指揮コロンビア交響楽団
 ?CBS。1962。オーマンディ指揮PO
 ?DG。1982。アバド指揮LSO
ピアノとオーケストラのためのロンド ニ長調K382
 (BBC。1961。シュナイダー指揮コロンビア交響楽団)
6つのドイツ舞曲K571(BBC。1966L。シュナイダー指揮イギリス室内管)
幻想曲とフーガK.394(BBC。1968L。シュナイダー指揮イギリス室内管)
ピアノと管楽器のための五重奏曲変ホ長調K452
 (CBS。1953。ランシーob、ジョーンズHr、ジリオッティcl、シェーンバッハfg)
ヴァイオリンソナタ33番ヘ長調K377(EMI。1937。ブッシュvn)
ピアノソナタ11番イ長調K311(HUNT。1956L)
ロンド イ短調K511(CBS。1977L=75歳記念)
【ベートーヴェン】
ピアノ協奏曲1番ハ長調
 ?Music And Arts。1953L。カンテッリ指揮NYP
 ?CBS。1965。オーマンディ指揮PO
 ?オルフェオ。1977L。クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
 ?テルデック。1983。小沢征爾指揮ボストン交響楽団
ピアノ協奏曲2番変ロ長調
 ?Cet。1958L。スカーリア指揮。ローマ・イタリア放送SO
 ?CBS。1965。オーマンディ指揮PO
 ?オルフェオ。1977L。クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
 ?テルデック。1984。小沢征爾指揮ボストン交響楽団
ピアノ協奏曲3番ハ短調
 ?CBS。1964。バーンスタイン指揮NYP
 ?オルフェオ。1977L。クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
 ?テルデック。1982。小沢征爾指揮ボストン交響楽団
ピアノ協奏曲4番ト長調
 ?RCA。1936。トスカニーニ指揮NYP
 ?CBS。1962。オーマンディ指揮PO
 ?CBS。1964?L。シュナイダー指揮マールボロ祝祭管
 ?オルフェオ。1977L。クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
 ?テルデック。1981。小沢征爾指揮ボストン交響楽団
ピアノ協奏曲5番「皇帝」変ホ長調
 ?CBS。1941。ワルター指揮NYP
 ?Music And Arts。1954L。カンテッリ指揮NYP
 ?Cet。1958L。カラッチオーロ指揮ナポリ・スカルラッティSO
 ?CBS。1962。バーンスタイン指揮NYP
 ?オルフェオ。1977L。クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
 ?テルデック。1981。小沢征爾指揮ボストン交響楽団
合唱幻想曲Op.80
 ?CBS。1964L。シュナイダー指揮マールボロ祝祭管
 ?オルフェオ。1977L。クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団
 ?テルデック。1981。小沢征爾指揮ボストン交響楽団
ピアノと管楽器のための五重奏曲変ホ長調op16
 (CBS。1953。ランシーob、ジョーンズhr、ジリオッティcl、シェーンバッハfg)
ピアノ、クラリネットおよびチェロのための三重奏曲
 (CBS。1974。ムーニエvc、ストルツマンcl)
ピアノ、オーボエ、クラリネット、ホルンおよびファゴットのための五重奏曲
 (CBS。1974。ヴルヴスキob、ストルツマンcl、ルーチhr、ヘラーfg)
ピアノ、ヴァイオリンおよびチェロのためのカカドゥ変奏曲
 (CBS。1981L。堀米ゆず子vn、ウィリーvc)
ヴァイオリンソナタ1番(Urania・Columbia。ブッシュvn)
ヴァイオリンソナタ3番変ホ長調
 ?NAXOS。1931。ブッシュvn、?EMI。1937。ブッシュvn
ヴァイオリンソナタ5番ヘ長調「春」(NAXOS・EMI。1933。ブッシュvn)
ヴァイオリンソナタ7番ハ短調(EMI。1932。ブッシュvn)
ヴァイオリンソナタ8番(Urania・Columbia。ブッシュvn)
ヴァイオリンソナタ9番「クロイツェル」(NAXOS・Columbia。1941。ブッシュvn)
チェロソナタ1番ヘ長調(CBS。1953。カザルスvc)
チェロソナタ2番ト短調(CBS。1951。カザルスvc)
チェロソナタ3番イ長調(CBS。1953。カザルスvc)
チェロソナタ4番ハ長調(CBS。1953。カザルスvc)
チェロソナタ5番ニ長調(CBS。1953。カザルスvc)
魔笛の主題による7つの変奏曲(CBS。1951。カザルスvc)
魔笛の主題による12の変奏曲(CBS。1951。カザルスvc)
ピアノソナタ1番ヘ短調op2-1(CBS。1970)
ピアノソナタ6番ヘ長調op10-2(CBS。1970)
ピアノソナタ8番「悲愴」ハ短調op13?CBS。1945、?CB  S。1962
ピアノソナタ11番「大ソナタ」変ロ長調op22(CBS。1973)
ピアノソナタ12番「葬送」変イ長調op26(CBS。1970)
ピアノソナタ13番変ホ長調op27-1(CBS。1980) 
ピアノソナタ14番「月光」嬰ハ短調op27-2?CBS。1951、?CBS。1962
ピアノソナタ16番ト長調op31-1(CBS。1970)
ピアノソナタ21番「ワルトシュタイン」ハ長調op53
 ?CBS。1952、?BBC。1973L、?CBS。1975
ピアノソナタ23番「熱情」ヘ短調op57?CBS。1947、?CBS。1962
ピアノソナタ24番「テレーゼ」嬰ヘ長調op78
 ?CBS。1947、?BBC。1973L、?CBS。1973 
ピアノソナタ26番「告別」変ホ長調op81a
 ?CBS。1951、?CBS。1977L=75歳記念
ピアノソナタ28番イ長調op101(CBS。1970)
ピアノソナタ29番「ハンマー・クラヴィーア」変ロ長調op106(CBS。1970)
ピアノソナタ30番ホ長調op109
 ?CBS。1952、?CBS。1976、?DG。1987L
ピアノソナタ31番変イ長調op110?CBS。1971、?DG。1987  L
ピアノソナタ32番ハ短調op111?CBS。1967、?DG。1987L
ディアベリ変奏曲(CBS。1957)
バガテルOp119(CBS。1966)
幻想曲Op77?CBS。1947、?CBS。1970
【メンデルスゾーン】
ピアノ協奏曲1番ト短調(CBS。1957。オーマンディ指揮PO)
ピアノ協奏曲2番ニ短調(CBS。1959。オーマンディ指揮コロン  ビア交響楽団)
華麗なカプリッチオOp22(CBS。1967。オーマンディ指揮PO)
前奏曲とフーガOp35-1(CBS。1976)
【シューベルト】
ピアノ五重奏曲イ長調Op114「鱒」
 (CBS。1967。ラレードVn、ネーゲルVa、パルナスVc、レヴィンCb)
ピアノ三重奏曲変ホ長調D929(EMI。1935。Aブッシュvn、Hブッシュvc)
幻想曲ハ長調D934(EMI。1931。ブッシュvn)
ピアノソナタ15番ハ長調「レリーク」D840(CBS。1955)
ピアノソナタ20番イ長調D959(CBS。1966)
ピアノソナタ21番変ロ長調D960?CBS。1975、?CBS。1977L=75歳記念
即興曲Op142(CBS。1979)
楽興の時(CBS。1952)
【ショパン】
24の前奏曲(CBS。1976)
【シューマン】
ピアノ協奏曲(CBS。1964。オーマンディ指揮FPO)
序奏とアレグロアパッショナートOp92(CBS。1964。オーマンディ指揮PO)
ピアノ五重奏曲
 ?CBS。1942。ブッシュSQ、?CBS。1963。ブダペストSQ
ヴァイオリンソナタ1番イ短調
 ?EMI。1937。ブッシュvn、?Columbia。1946。ブッシュvn
ヴィオリンソナタ2番ニ短調(Columbia。1943L。ブッシュvn)
【ブラームス】
ピアノ協奏曲1番ニ短調
 ?CBS。1961。オーマンディ指揮PO
 ?CBS。1968。セル指揮クリーブランド交響楽団
ピアノ協奏曲2番変ロ長調
 ?CBS。1960。オーマンディ指揮PO
 ?CBS。1966。セル指揮クリーブランド交響楽団
ピアノ五重奏曲ヘ短調
 ?EMI。1938。ブッシュSQ、?CBS。1963。ブダペストSQ
ピアノ四重奏曲1番ト短調(EMI。1949。ブッシュSQ)
ピアノ四重奏曲2番イ長調(EMI。1932。ブッシュSQ)
ピアノ三重奏曲2番ハ長調(CBS。1942。ブッシュSQ)
ホルントリオ
 ?EMI。1933。ブレインHr、ブッシュvn
 ?CBS。1960。ブルームHr、ツリーVn
ヴァイオリンソナタ1番ト長調「雨の歌」(EMI。1932。ブッシュvn)
ヴァイオリンソナタ2番イ長調(EMI。1932。ブッシュvn)
チェロソナタ1番(DG。1982。ロストロポーヴィチvc)
チェロソナタ2番(DG。1982。ロストロポーヴィチvc)
ヘンデル変奏曲とフーガ(CBS。1979)
4つの小品Op119(CBS。1979)
4手のためのハンガリー舞曲2・5・20番(Pearl。ウィンクラーpf)

【Rシュトラウス】
ブルレスケ(CBS。1966。セル指揮クリーブランド交響楽団)
【バルトーク】
ピアノ協奏曲1番
 ?rlecchino。1960L。ライナー指揮NYP
 ?CBS。1962。セル指揮コロンビア交響楽団
【プロコフィエフ】
ピアノ協奏曲4番(CBS。1958。オーマンディ指揮PO)
【レーガー】
ピアノ協奏曲(CBS。1959。オーマンディ指揮PO)
ヴァイオリンソナタ5番嬰ヘ短調〜アレグレット(EMI。1931。ブッシュvn)
ヴァイオリンソナタ ハ短調Op139(Columbia。カルミレッリvn)
JSバッハの主題による変奏曲とフーガ?BBC。1973L、?CBS。1984
ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ全集
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタと言えば、5番「春」、9番「クロイツェル」が有名ですが、10曲のソナタ全曲を録音する巨匠ヴァイオリニストも多く、またベートーヴェンはピアノパートを念入りに書いているのでピアニストも重要な存在となり、二人の演奏家による顔合わせ、他の演奏との聴き比べが非常に面白い曲です。

(1)クライスラー・ルップ(1935〜6年。RCA)
史上最初のソナタ全集で、晩年のクライスラーのテクニックはやや衰えていますが、彼らしい優美さと様式美は今日なお聴く価値を保っています。
(2)ハイフェッツ・ベイ(1947年。RCA)
あまり話題にならないのが不思議で、巨匠ハイフェッツの精緻な演奏が聴ける。今聴くと性急なところがあったり「クロイツェル」が意外に普通(?)だったりしますが、彼のベートーヴェンを味わうことができます。なおハイフェッツの「クロイツェル」はスミスとのステレオ録音があります。
(3)グリュミオー・ハスキル(1956〜7年。フィリップス)
美音家グリュミオーの腕前もさることながら、モーツァルト演奏で一家言をなしているハスキルとの名アンサンブルが聴ける。このコンビのモーツァルトのソナタ6曲も名演だが、ベートーヴェンでも端正な表現など聴くたびに新発見がある。モノラル録音が残念。なおグリュミオーは1975〜6年にアラウと再録音しましたが6曲で終わっていて全集に到らなかったのが残念です。
(4)オイストラフ・オボーリン(1962年。フィリップス)
どの曲ももっとも安定していてベートーヴェンの音楽を堪能できるのがこのセット。今は輸入盤BOXで廉価で買えます。旧ソ連の巨匠オイストラフの骨太の美音ヴィブラートと完璧なテクニックを味わえ、またオボーリンの伴奏も淡白でいながら要所をおさえ、説得力があり、おすすめです。
(5)メニューイン・ケンプ(1970年。DG)
DGではケンプのピアノソナタ全集はもちろん、フルニエとのチェロソナタ、シェリングを加えたトリオなどがあり、一連のベートーヴェン室内楽に関わっていて、全て揃えたくなります。老メニューインのテクニックも衰えていますが、ケンプの伴奏は非常にドイツ的な構成感をもち、やはり説得力を持っています。
(6)パールマン・アシュケナージ(1973〜75年。デッカ)
この二人がまだ若い時期の演奏で、端正で柔らかいアシュケナージの伴奏にパールマンの美音が重なり、若々しく清々しいベートーヴェンになっています。
(7)シェリング・ヘブラー(1978〜9年。フィリップス)
巨匠シェリングの力強い骨太の表現は惚れ惚れします。ヘブラーはモーツァルトの得意な女性でやや控えめすぎる感じもしますが、シェリングの雄弁さが補って尚余りあります。なお彼はルービンシュタインと「春」「クロイツェル」なども録音しており(RCA)、こちらも名演です。
(8)クレーメル・アルゲリッチ(1984〜94年。RCA)
最初の録音から10年かけて実現し、最後の「クロイツェル」録音は当時のクラシック音楽界の話題をさらいました。大胆でしかも情熱的で唯一無比の二人の個性が結実したような名演です。ベートーヴェンを聴くという意味でも知的な解釈や構成感など聴くたびに説得力がありますが、やはり二人の個性を味わうべきでしょう。
(9)デュメイ・ピリス(1997〜2002年。DG)
こちらも一音一音が丁寧で素晴らしく、クレーメル盤と並ぶ最右翼。クレーメルの細くて神経質な音と違って、デュメイは暖かな感じの美音で、ピリスの伴奏も緩急自在で申し分なく、このソナタの新たな境地を見いだしたような名演です。
ブラームスの協奏曲
4曲のブラームスの協奏曲はどれも魅力的で、ソリストの聴き比べが面白い。巨匠と言われる演奏家のほとんどが顔を出しているので名匠の個性を知るうえで格好の曲になっている。若くロマンティックなピアコン1番、オケとピアノが対等で交響曲的なピアコン2番、同じくオケが精密なヴァイコン、晩年の渋いドッペル(ヴァイオリンとチェロ)、どれをとってもすばらしい曲ばかり。以下のコメントは、ブラームスらしさだけでなく、演奏家の個性、完成度など様々な視点で書いています。

●ピアノ協奏曲1番ニ短調 Op15
(1)ホロヴィッツ・トスカニーニ・NYP(1935年。ヴァーンメディア)
ライブのエアチェック音源で最悪の録音(一時周波数があわなくなってる)だが、演奏はヴィルトゥオジティあふれるものでホロヴィッツと岳父の巨匠同士のぶつかりあいは凄まじい限り。特に3楽章の圧倒的なスピード感と盛りあがりはすばらしい。超おすすめ。
(2)ホロヴィッツ・ワルター・コンセルトヘボウ(1936年。ワルター協会)
こちらも録音は貧しいが、ワルターの指揮が(1)よりブラームスに熟知していて古風な感じ。3楽章も(1)ほど過激でなく節度ある盛りあがりが名演の感動をよぶ。ただ1楽章後半5分に録音の欠落があって(1)と合成された盤もある。
(3)バックハウス・ベーム・VPO(1953年。デッカ)
バックハウスはステレオで再録音しなかったので唯一の録音(SP除く)で、彼の豪壮な面やアグレッシブなところはブラームスにぴったりの個性。録音がやや貧弱なのが残念。
(4)ルービンシュタイン・ライナー・シカゴ(1954年。RCA)
重めのタッチでロマンティックの極み。かつ豪壮、やや明るい響きであるのがルービンシュタインの特徴。後年のメータ盤に比べると淡白な印象であるが、こちらのほうが若々しくて聴き応えがある。
(5)カーゾン・セル・ロンドンSO(1961年。デッカ)
典雅で味わい深いピアノ。スケールも大きくオケもどっしりしていて完成度が高く、すばらしい演奏。
(6)グールド・バーンスタイン・NYP(1962年。CBS)
ライブで指揮者が演奏前に「この遅いテンポはソリストによるもの」と異例のスピーチ。しかし今聴くとグールドの演奏はそれほど個性的という感じもなく、むしろ滋味あふれるロマンティシズムの極地を感じる名演。
(7)ゲルバー・デッカー(1966年。EMI)
録音がいまひとつこもった感じなんですが、若きゲルバーは情熱的ながら構成ががっしりして聴き応え十分です。
(8)Rゼルキン・セル・クリーブランド(1968年。CBS)
精神的で重いタッチのピアノとがっちりした構成感あるオケがすばらしく、この曲を代表する名盤。
(9)アラウ・ハイティンク・コンセルトヘボウ(1969年。フィリップス)
ソリスト・オケともども重量級の演奏で、沈潜するロマンティックな面を重視してスケールが大きい。
(10)ギレリス・ヨッフム・ベルリンPO(1972年。DG)
独奏・指揮・オケともどもスケールが大きく、ギレリスの輝かしいピアノと枯れた表現はこの曲にぴったりで、イチオシ。
(11)ブレンデル・イッセルシュテット・コンセルトヘボウ(1973年。・フィリップス)
クールで学究肌な頃のブレンデルで、美しさで際だっているが個性が弱く印象も少ない感じ。
(12)ルービンシュタイン・メータ・イスラエルPO(1976年。ロンドン)
最晩年のライブ録音でテクニック的に弱い面もあるが、涙を誘うような感動的な名演。精神性がただものではない。
(13)ポリーニ・ベーム・VPO(1979年。DG)
老巨匠の指揮のがっちりした指揮に独奏がぴったりとあわせている感じ。ピアニストの個性は弱いが演奏としては立派。
(14)アシュケナージ・ハイティンク・VPO(1982年。デッカ)
独奏・オケの美しさが印象的な演奏。自然な流れの演奏で万人向け。
(15)ツィマーマン・バーンスタイン・VPO(1983年。DG)
独奏者のタッチの美しさとウィーンフィルの美しさに加えてバーンスタインが非常にダイナミックで個性あふれる名演。
(16)ブレンデル・アバド・ベルリンPO(1986年。フィリップス)
暖かみのある演奏に変化したブレンデルのピアノは旧盤と違ってスケールが大きく聴き応えがあり、アバドの指揮も彼ならではですばらしい演奏。万人向けの名演。
(17)ポリーニ・アバド・ベルリンPO(1997年。DG)
ライブ盤で旧盤とは異なって自己主張のある独奏。録音もよくピアニズムは抜群で、これも万人向けの名盤。

●ピアノ協奏曲2番変ロ短調Op83
(1)ホロヴィッツ・トスカニーニ・NBC(1940年。RCA)
速めのテンポで颯爽としていて、この曲ではかなり個性的な解釈でありながら尽きない魅力がある超名演。
(2)Eフィッシャー・フルトヴェングラー・BPO(1942)
ライブでアラは多いのですが、フルヴェンらしいスケールの大きなオケにフィッシャーが応えるような精神性あふれる感動の名演。
(3)バックハウス・シューリヒト・VPO(1952年。デッカ)
バックハウスお得意の曲(晩年のライブはこれとベートーヴェン4番ばかりだった)で、後年のステレオ録音に比べると印象は薄いが、シューリヒトの端正なセンスが光る名演。録音はやや貧弱なのが残念。
(4)ルービンシュタイン・クリップス・(1958年。RCA)
重めのタッチでロマンティックの極み。明るい印象でこの曲にあっているが、やや荒っぽい印象。
(5)リヒテル・ラインスドルフ・シカゴ(1960年。RCA)
彼の強靱な和音やたくましさがこの曲ぴったり。オケは平凡な印象。
(6)リヒテル・ムラヴィンスキー・レニングラード(1961年。メロディア)
ライブでモノラル録音。しかし独奏も指揮者も全盛期の素晴らしい記録で、スケールが大きく聴き応えがある。
(7)Rゼルキン・セル・クリーブランド(1966年。CBS)
1番同様に精神的で重いタッチのピアノとがっちりした構成感あるオケがすばらしく、この曲を代表する名盤。
(8)バックハウス・ベーム・VPO(1967年。デッカ)
最晩年のバックハウスの淡々とした風格とベーム・ウィーンフィルの良さが素晴らしく、この曲の永遠の名盤。精神性が高く、しかも聴いた後にブラームスへの感動を強く感じる。
(9)アラウ・ハイティンク・コンセルトヘボウ(1969年。フィリップス)
1番同様ソリスト・オケともども重量級でスケールが大きい。
(10)ルービンシュタイン・オーマンディ・フィラデルフィア(1971年。RCA)
大らかで明るい感じの巨匠的独奏はさすがの印象。オケもしっかりしていて聴き応えがある。旧盤よりはるかに素晴らしい印象。
(11)ギレリス・ヨッフム・ベルリンPO(1972年。DG)
1番同様、独奏・指揮・オケともどもスケールが大きく、ギレリスの輝かしいピアノと枯れた表現は素晴らしい限り。
(12)ブレンデル・イッセルシュテット・コンセルトヘボウ(1973年。・フィリップス)
1番同様美しさで際だっているが個性が弱い印象。
(13)ゲルバー・ケンペ(1973年。EMI)
ゲルバーのピアノも冴えているが、この盤の特徴はケンペの非常に大らかな伴奏。渋い!の一言。
(14)ポリーニ・アバド・VPO(1976年。DG)
1番のベームに対して2番のアバドは躍動感のある指揮で、独奏・指揮ともども強靱な印象。万人向け。なお同じメンバーによる映像も残っている。
(15)アシュケナージ・ハイティンク・VPO(1982年。デッカ)
1番と同じコンビであるが、2番のほうが素晴らしい。1楽章冒頭はゆったりのびやかに始まりホルンの美しさは最高。万人向けの耽美な名演。
(16)ツィマーマン・バーンスタイン・VPO(1983年。DG)
1番と同じコンビで、バーンスタインのダイナミックで個独奏者のタッチの美しさとウィーンフィルの美しさに加えて性な指揮が印象的であるが、独奏のピアニズムも注目すべき名演。
(17)ポリーニ・アバド・ベルリンPO(1997年。DG)
1番と同じコンビによるライブ盤。旧盤に比べてふくよかで動きがあり、ライブの熱気も伝わってくる。しかも完成度も高く、ピアニズムも抜群で、万人向けの名盤。
(18)ブレンデル・アバド・ベルリンPO(1991年。フィリップス)
1番同様暖かみのある演奏に変化したブレンデルのピアノは旧盤と違ってスケールが大きく聴き応えがあり、オケの迫力も十分ですばらしい演奏。

●ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op77
(1)クライスラー・ブレッヒ・ベルリン国立歌劇場(1927年。EMI)
SP復刻なので音は貧弱ながら、独奏のヴィヴラートの美しさと洗練された演奏が印象的。
(2)クライスラー・バルビローリ(1936年。EMI)
旧盤同様クライスラーの点がな演奏を聴く感じであるが、ブレッヒ指揮のほうが完成度が高い。
(3)デ=ヴィート・ケンペン・ドイツ歌劇場(1941年。DG)
女性とは思えない強靱さと繊細さを兼ね備えた名演。
(4)ヌブー・ドブロウェン・フィルハーモニア(1946年。EMI)
30歳で飛行機事故で早世した彼女の遺産の一つ。ただならぬ緊張感が最後までつづき、情熱あふれるブラームスを突き詰めた印象。
(5)ヌブー・イッセルシュテット・北ドイツ放送(1948年。フィリップス)
こちらはライブ録音で、緊張感と構成力にあふれるスケールの巨大な演奏でオイストラフの女性版という印象。
(6)メニューイン・フルトヴェングラー・ルツェルン音楽祭(1949年。EMI)
音楽祭ライブで、巨大な指揮によるスケールの大きな演奏で、メニューインの印象が弱い。
(7)Aブッシュ・ミュンク・バーゼルO(1951年。SS)
音質は悪いが、太い美音とドイツ的な堅固な構成が印象的。
(8)オイストラフ・コンドラシン・モスクワPO(1952年。メロディア)
録音がざらっとしてオケもやや荒い感じもするが、独奏・指揮ともスケールが大きく素晴らしい演奏。
(9)デ=ヴィート・フルトヴェングラー・トリノイタリア放送(1952年。ミュージックアーツ)
素晴らしい顔合わせによる歴史的録音。巨大な指揮のなかで彼女の強靱かつ繊細な演奏が際だち、ヴィルトゥオジティを感じる名演(3楽章の途中で弾けなくなるアクシデントがあるのは残念)。
(10)デ=ヴィート・シュバルツ(1953年。EMI)
旧盤同様、彼女の素晴らしさを感じる一枚。ただオケは平凡な印象。
(11)ヘンデル・チェリビダッケ(1953年。EMI)
彼女の太く美しい音が印象的。指揮はやや個性的であるがスケールが大きい印象。
(12)オイストラフ・コンヴィチュニー・ドレスデン国立(1954年。DG)
独奏・指揮ともども骨太の演奏の印象。オケも古風でブラームスによく合っている。
(13)フェラス・シューリヒト・VPO(1954年。デッカ)
速めのテンポで颯爽とした演奏。線の細い感じの美音が印象的。
(14)ハイフェッツ・ライナー・シカゴ(1955年。RCA)
速めのテンポで颯爽と弾く印象。完全主義的なハイフェッツの精巧さに加えてシカゴの重厚な音は十分に感動的。
(15)メニューイン・ケンペ(1957年。EMI)
颯爽とした演奏であるが印象が薄い。
(16)シゲティ・メンゲス・ロンドンSO(1959年。フィリップス)
最晩年のシゲティによる精神性の深い名演。一音一音が意味深い感じで聴き応えがある。
(17)スターン・オーマンディ・フィラデルフィア(1959年。CBS)
大らかに自然にこの曲の美しさを演奏した印象。やや明るい響き。
(18)オイストラフ・クレンペラー・フランス国立(1960年。EMI)
やや遅目のテンポでスケールが超巨大。重厚で味わい深く、オイストラフの録音でもベスト級。この曲の代表的名盤。
(19)フェラス・カラヤン・BPO(1964年。DG)
颯爽とした速めの演奏で洗練されているが、印象は弱い。
(20)オイストラフ・セル・クリーブランド(1969年。EMI)
クレンペラー盤とほぼ互角のオイストラフの名盤。豊かな美音と堅固な構成感、スケールの大きさなど、この曲の魅力を余すことなく伝える。
(21)シェリング・ハイティンク・コンセルトヘボウ(1973年。フィリップス)
バッハお得意のシェリングらしく真摯な解釈で、派手さはないけれど魅力のある名演。
(22)ミルシティン・ヨッフム・VPO(1974年。DG)
ウィーンフィルの美音をバックに力強く端正な独奏が印象的。趣味のよい名演。
(23)クレーメル・カラヤン・VPO(1976年。VPO)
まだ若いクレーメルの独奏は後年よりも個性は抑え気味。印象は弱い。
(24)ムター・カラヤン・BPO(1981年。DG)
天才少女時代のムターのストレートで端正な名演で、カラヤンBPOの精巧なバックも魅力的。
(25)クレーメル・バーンスタイン・VPO(1982年。DG)
もっとも個性的なブラームス。ウィーンフィルとの取り合わせの妙が面白く、ライブながら完成度は高い。ちなみにカデンツァはレーガーによる前奏曲。終楽章の熱気も尋常ではない。
(26)ムローヴァ・アバド・BPO(1992年。フィリップス)
透明感が高く繊細な独奏とスケールの大きな指揮による新しいブラームス像。完成度は高く、すばらしい演奏。
(27)クレーメル・アーノンクール・コンセルトヘボウ(1996年。T)
旧盤と同じく個性的なブラームス。古風なオケの響きと妙なとりあわせで、鋭さと官能さをあわせた魅力がある。
(28)ヴェンゲーロフ・バレンボイム・シカゴ(1997年。T)
技巧的で雄弁な若いヴェンゲーロフの独奏は聴き応えがある。悠然としたバックもスケールが大きく素晴らしい演奏。
(29)キョンファ・ラトル・VPO(2000年。EMI)
今までこの曲の録音をしなかったキョンファによる満を持しての録音。繊細な表情は彼女ならでは。同じコンビのライブの映像もあって、彼女の顔の表情も印象的。

●ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲Op102
(1)ティボー・カザルス・コルトー(1929年。EMI)
SP復刻で音は貧しいが、往年の巨匠たちの味わいに感動。特にカザルスの力強く太い音は魅力的。
(2)デ=ヴィート・バルトィーノ・シューリヒト(1952年。EMI)
2人の息があわない感じで印象は弱いが、デ=ヴィートの独奏は聞き応えがある。
(3)ボスコフスキー・ブラベツ・フルトヴェングラー(1952年。EMI)
独奏二人は優美で洗練されているが、指揮は重厚な印象。
(4)オイストラフ・フルニエ・ガリエラ(1959年。EMI)
二人の巨匠の息があい、枯れた味わいのこの曲の良さを伝える名演。
(5)フランチェスカッティ・フルニエ・ワルター(1959年。CBS)
洗練された二人の巨匠にワルターが格調高く支える印象で、これも名演。
(6)ハイフェッツ・ピアティゴルスキー・ウォーレンシュタイン(1960年。RCA)
アメリカを代表する名匠二人の息はぴったりで、名技性に優れた名演。
(7)シュナイダーハン・シュタルケル・フリッチャイ(1961年。DG)
名匠による誠実で味わい深い演奏。ただ個性が弱い感もある。
(8)スターン・ローズ・オーマンディ(1964年。CBS)
明るい響きの独奏二人で、スターンの独奏が聞き物。
(9)オイストラフ・ロストロポーヴィチ・セル(1969年。EMI)
この曲を代表する歴史的名盤。ソ連の巨人二人に名匠セルの顔合わせで独奏は完璧の一言。味わい深さやスケール感も気宇壮大。
(10)シェリング・シュタルケル・ハイティンク(1970年。フィリップス)
独奏二人は堅実な巨匠でドイツ的で誠実なスタンスが印象的。
(11)クレーメル・マイスキー・バーンスタイン(1982年。DG)
巨匠バーンスタイン晩年のスケールの大きさと鋭利で切れ味の鋭い独奏二人の丁々発止が面白い。VPOの豊かな響きも素晴らしい。
リスト「ピアノソナタ」ロ短調
リストのピアノ作品は膨大で、全集といってもLP時代にクリダが録音したものくらい(IPG。CDの再発をずーっと待ってます)で、また作品集を取り上げるとすればシフラ、ブレンデル、ボレット、ベルマン、アラウあたりがあるけど収録曲がまちまちで比較にならない。ということで、私の好きな「ピアノソナタ」ロ短調の聴き比べをメモしておきます。

(1)コルトー(1929年。EMI)
録音はこの年代にしては鮮明で、彼らしいファンタジーに富むリストで一聴の価値があります。
(2)ホロヴィッツ(1932年。EMI)
録音はこもっていて良くないですが、驚嘆すべきピアニズムで一気呵成に弾ききってます。
(3)アニー・フィッシャー(1953年。フンガロトン)
ややアラがあるが、彼女らしい情熱とロマンティシズムに満ちたリスト。
(4)リヒテル(1960年。フィリップス)
これも録音はあまり良くないですが、強い打鍵によるリスト。ただしリヒテルならもっと凄くてもよいのにと思うのは欲深い?
(5)シフラ(1962年。EMI)
リスト弾きで知られるシフラで、技巧は申し分ないけど彼には不向きな曲のようで個性に乏しい感じ。
(6)ギレリス(1964年。RCA)
もっともオーソドックスかつ劇的で、「鋼鉄のピアニスト」の本領発揮、リストのピアニズムを十分堪能でき、おすすめです。
(7)ルービンシュタイン(1965年。RCA)
やや明るめの健康的なリスト。ppのロマンティックさはショパン風でもある。それにしてもテクニックは冴えてます。
(8)アラウ(1970年。フィリップス)
これも素晴らしい演奏。遅からず速からずオーソドックスで、それでいて劇的な効果を生むスケールの大きな演奏でおすすめ。
(9)アルゲリッチ(1971年。DG)
ホロヴィッツ旧盤と並ぶスピードの速さ。スリリングさは随一ですが、その分スケール感が弱いかも。
(10)クリダ(1974年。IPG)
テクニック抜群で響きもよい。暗さを感じさせないリストで、全集をつくった彼女ならではのオーソドックスな名演。
(11)ベルマン(1975年。メロディア)
あの「超絶技巧練習曲」の名盤のピアニストで、テクニックや響きは十分なのに、なんかスケールが弱い感も。
(12)ホロヴィッツ(1973年。RCA)
千変万化の音色、ゴージャスなフォルテッシモ、凄絶なアッチェレランドなど、もっともユニークかつスケール壮大な演奏。一度はまれば病みつきになって他のが聴けなくなります。悪魔と天使が混在した超名演。
(13)ブレンデル(1981年。フィリップス)
ややクールで学究肌の色合いのリスト。スケール感は大きくないが、テクニックは惚れ惚れするほど。
(14)ボレット(1982年。デッカ)
きらめくピアニズムにゴージャスな響き。ロマンティックさを追求したリストでスケールも大きい。
(15)アラウ(1985年。フィリップス)
旧盤よりもスケールが大きく、オーソドックスさも申し分なく、おおらかな印象。
(16)リヒテル(1988年。フィリップス)
ライブで多少アラもあるが、彼らしい強い打鍵や独特のピアニズムが印象的。
(17)ポリーニ(1989年。DG)
技巧、響きとも申し分なく、完成度の高い健全なリスト。ただ燃えるようなロマンティックさがもっと欲しいような。
(18)ツィマーマン(1990年。DG)
ポリーニ盤と同様高い完成度を誇るが、こちらのほうがオーソドックスかつロマンティック。ffの打鍵の力強さが印象的。
プロコフィエフのピアノ協奏曲3番
近代のピアノ協奏曲の屈指の傑作がプロコフィエフの3番ではないかと思う時がよくあります。以下、所蔵盤のコメントをしておきます。

(1)プロコフィエフ・コッポラ(1932EMI→ナクソス)
 自作自演で歴史的な録音。音は貧しくピアノも荒っぽいけどそのピアニズムは強烈。
(2)カペル・ドラティ(1945RCA)
 アメリカの才人でタッチが研ぎ澄まされてます。
(3)フランソワ・クリュイタンス(1953EMI)
 イマジネーションたっぷりで独特の感性。おすすめ。
(4)カッチェン・アンセルメ(1953デッカ)
 技巧的でピアニズム豊かな印象(ブラームスがお得意の方)
(5)ギレリス・コンドラシン(1955CDVE)
 凄い顔合わせながらライブでアラが多く聴く価値はあまりない。
(6)ジャニス・コンドラシン(1962マーキュリー)
 ギラギラしたピアニズムでこれも凄い。アメリカ人では最高かも。
(7)フランソワ・ロヴィツキ(1963EMI)
 旧盤と同じく独特の感性。オケがいいのでこれもおすすめ。
(8)アルゲリッチ・アバド(1967DG)
 もっともスリリングで永遠の名盤。イチオシ。
(9)ベロフ・マズア(1974EMI)
 一番テンポが落ち着いていながら説得力があって若々しい名演。
(10)アシュケナージ・プレヴィン(1975デッカ)
 ピアノは完成度が高くテンポも速め。録音もよく万人向け。
(11)クライネフ・キタエンコ(1992エラート)
 落ち着いたテンポで熱演。
(12)キーシン・アバド(1993DG)
 お得意の曲らしくパワフルでオケもよくこれもおすすめ。
(13)アルゲリッチ・デュトワ(1997EMI)
 旧盤よりもスリリングさは少なくなり、大らかでいてパワフルな感じ。
ブラームスの交響曲全集
ブラームス交響曲全集はCD3枚くらいだし昔の名盤が廉価になってることが多いのでついつい買ってしまいます。以下所蔵のものを整理してコメントしておきます。

(1)フルトヴェングラー・VPO・BPO(1947〜52年。EMI)
全集としての企画ではなく戦後のライブの集成。音がよければ間違いなくベスト盤。1番のアゴーギグや3番の盛りあがり、4番の枯れた味わいなどドイツ音楽の魅力を堪能できます。ちなみに各曲複数のライブ録音があり(1番はターラ盤やDG盤、2・3番もDG盤)それぞれの違った味わいがフルヴェンならではの魅力です。
(2)トスカニーニ・NBC(1951〜52年。RCA)
ベートーヴェンと同じようにフルヴェンとトスカニーニは対称的な演奏で、造形力や様式美に優れてます。年をとるとこういうドライな演奏に惹きつけられるから不思議です。もちろんモノラル録音。
(3)ワルター・ニューヨークPO(1951〜53年。CBS) 
後年のステレオ録音とは違って、このモノラル旧盤は覇気があって構築性もあり、すばらしい演奏です。アダージョ楽章の優美さはベストに近く、オケもうまいので理想的な演奏と言えます。
(4)クレンペラー・フィルハーモニア(1956〜57年。EMI)
やや遅めのテンポでスケールが著しく大きく、これも年をとると惹きつけられる演奏です。ブラームスの陰翳がよく描かれています。
(5)ワルター・コロンビア(1959〜60年。CBS)
ワルター最晩年のステレオによる再録音で、ブラームスの交響曲の入門編と言えるでしょう。今聴くとオケが薄っぺらいのが気になりますが、それにしてもブラームスの枯れた味わいや生き生きとした音楽がここに濃縮されています。私が学生時代もっとも聞き込んだ演奏。4番は永遠の名盤。
(6)カラヤン・BPO(1964〜65年。DG)
カラヤンの最初の全集で、洗練されたオケの響きや流麗さは随一。やや急ぎ目で深みに欠ける感じがしないでもないですが、意欲的なところもあって捨てがたい魅力も。
(7)セル・クリーブランド(1966〜67年。CBS)
トスカニーニに近く、速めのきびきびしたテンポでスケール感も大きく素晴らしい演奏。ただ情感的なブラームスが聴きたい人には退屈に聞こえるかも。
(8)バルビローリ・VPO(1966〜67年。EMI)
ウィーンフィルのよさが凝縮された全集で、あまり目立たないようなのでおすすめの逸品。2番や4番は馥郁として素晴らしいです。輸入盤は廉価で買えます。
(9)ハイティンク・コンセルトヘボウ(1970〜72年。フィリップス)
優美さとオケのうまさが光る濃厚な演奏ですが、ちょっと構築性が今ひとつで説得力に欠けるような感じも受けます。
(10)ザンデルリンク・ドレスデン国立(1971〜72年。デンオン)
最初の全集で、この人らしい堅実で素朴なブラームス。職人技のようなところは目立たない魅力。派手さはなく、どの曲も完成度が高く、全集としての価値は高いです。
(11)ボールト・ロンドンPO(1970〜72年。EMI)
イギリスの大御所ボールト最晩年の録音。メニューインがコンマスとして手伝っているという伝説的な全集で、堅実な歌い回しや明るい色調が独特の全集になっていて、輸入盤は廉価なのでおすすめです。
(12)ケルテス・VPO(1973年。デッカ)
これまたバルビローリと並んでVPOの魅力を十分引き出した演奏。優美な歌い回しと構成力もあってブラームスを満喫できます。
(13)イッセルシュテット・北ドイツ放送SO。EMI ndr)
最近輸入盤でCD化されたばかりで、洗練された指揮ぶりと渋いオケの響きが魅力ですが、多少アラもあって彼の魅力を最大限に伝えるものではない印象。
(14)ケンペ・ミュンヘンPO(1975年。HM)
堅実で渋い演奏。派手さを求める人には退屈かもしれません。北ドイツ的なブラームスが味わえ、全集としても価値の高い演奏。
(15)ベーム・VPO(1975年。DG)
ウィーンフィルの魅力と堅実なベームの魅力がつまった全集の最右翼です。録音もよく、聴けば聴くほど滋味があふれてくるような名演です。とくに2番が名演です。
(16)マゼール・クリーブランド(1975〜76年。デッカ)
このオケのクリアーな響きと情感のこもった指揮ぶりが魅力ですが、彼の個性は独特で、好悪分かれそう。
(17)ヨッフム・ロンドンPO(1976年。EMI)
堅実な指揮でスケールも大きく力強さもあって貫禄のあるブラームス。どの曲も出来がよくすばらしい演奏です。
(18)ムラヴィンスキー・レニングラード(1950〜78年。SS)
全集として録音されたものではなく、ライブ録音集成で時期もばらばら(彼のライブを集めたもう1種の全集もあります)。トスカニーニ的な面を全面に押し出しながら、壮大なスケールが味わえますが、1番は録音が古いのが残念。
(19)カラヤン・BPO(1977年。DG)
カラヤン2度目の全集で流麗さは旧録と同じですが、全体的に個性に乏しい感じ。軽いわけではありませんが。
(20)ショルティ・シカゴSO(1978〜79年。デッカ)
このオケの機能性を存分に発揮したショルティらしい緻密なブラームス。響きは明るめで透明感があってその分、陰翳のあるブラームスをお求めの方には違和感があるかもしれません。
(21)バーンスタイン・VPO(1981〜82年。DG)
もっともロマンティックな濃厚さがあり、充実感もひとしお。実直なベーム盤と対称的に濃厚さでVPO盤の最右翼。すべてライブで迫力も満点。
(22)カラヤン・BPO(1986〜88年。DG)
カラヤン最晩年の録音で、流麗さとブラームスの音楽が見事に昇華してすばらしく個性的な名演になっていて、これもおすすめです。
(23)デイビス・バイエルン放送SO(1988〜89年。RCA)
流麗な演奏で自然な情感を大事にしているような演奏。スケール感もあって、どの曲もすばらしい名演です。
(24)ザンデルリング・ベルリンSO(1990年。カプリッチョ)
評論家U氏が絶賛する全集で、実直で渋い味わいは旧録以上に物々しく、優美さもあわさり彼の集大成のような印象。全集としての価値はやはり高いです。
(25)アバド・BPO(1988〜91年。DG)
明るい響きながら、彼独特のカンタービレ的なフレージングが妙に曲とマッチして新たな境地。オケのうまさもピカイチで全集として価値も高い。特に2番は名演。
(26)ジュリーニ・VPO(1991年。VPO)
ゆったりとしたテンポ感から大きなスケールが生まれ、VPOの魅力も十分堪能でき、これまた個性的な名演になっています。陰翳ゆたかな2番・4番が聴き応えがありますが、速いテンポがお好みの方にはじれったく聞こえるかもしれません。
(27)バレンボイム・シカゴSO(1993年。エラート)
遅めのテンポでスケール感が大きく充実した内容です。輸入盤は廉価で買えます。どの曲もすばらしい出来ですが、これもテンポ感がじれったく感じる方など好悪分かれそうです。
(28)ヴァント・北ドイツ放送SO(1996年。RCA)
洗練された緻密な指揮でオケの古風な響きとあわさって、これまた個性的な名演になっています。ライブでスケール感も大きく表現力もすばらしいです。ただ個性的なブラームスなのでこれも好悪分かれそうです。
(29)アーノンクール・BPO(1996〜97年。テルデック)
彼にしてはロマンティックさを重視した演奏ですが、アゴーギグやフレージングが個性的で、好悪分かれそうです。
彼の6曲の協奏曲は、交響曲に劣らず魅力的で、技巧的に難曲が多いためか最近は若い演奏家がチャレンジしてどんどん演奏するようになってます。

●ヴァイオリン協奏曲1番 イ短調作品99
もっともすばらしい協奏曲で、幻想的な1楽章、超スピードのスケルツォの2楽章、まるまるカデンツァの3楽章、技巧満開の4楽章からなります。
作品を献呈されたオイストラフ盤がもっともすばらしく(何種類もありますがコンドラシン指揮がおすすめ)、あとコーガンも切れがあってすばらしい演奏。若手では五嶋みどり、ヴェンゲーロフ、レーピンあたりも熱演してます。
●ヴァイオリン協奏曲2番嬰ハ短調 作品129
1番に比べて透明度が高く、奥深い感じで自由でより幻想的です。これもオイストラフ盤をおすすめします。あとクレーメルも傑出しています。
●チェロ協奏曲1番変ホ長調 作品107
おどけたスケルツォ風の1楽章、暗いアダージョの2楽章、まるまるカデンツァの3楽章、迫力ある4楽章からなります。金管はホルンだけですが効果的に用いられています(ショスの協奏曲はバックのオケの工夫が実にうまいですね)。
献呈されたロストロポーヴィチに勝る演奏はなさそうです(何種類もあります)が、どれも録音が悪く、超絶技巧のマイスキーやマ、シフの演奏も聴きごたえがあります。
●チェロ協奏曲2番ト短調 作品126
ヴァイコン2番同様、晩年の透明度の高い作風で、熱をおびた後半はオケの迫力がたまりません(ミュージックボックスとよばれる打楽器群が大活躍します)。ロストロポーヴィチの数種の演奏がベストです(小沢指揮のエラート盤は技巧的にいまいち)。あとマイスキーが超絶技巧でおすすめ、グードマン、シフなども健闘してます。
●ピアノ協奏曲1番ハ短調 作品35
若書きでおどけた感じが強い小規模の作品で、ソロトランペットが活躍します。ロマン派のピアコンとはずいぶん作風が異なる、ショス特有のアイロニーに満ちたピアコンです。ショス本人の自作自演が一聴の価値がありますが(2種)、他にアルゲリッチ、キーシンなども聴き応えがあります。
●ピアノ協奏曲2番
ラフマニノフなどに比べるとロマン的なピアコンではなく、ショスらしい交響的な協奏曲で規模も小さめです。1番と同じくショス本人の自作自演2種のほか、アルゲリッチ、バーンスタインなどの名演もあります。
4/15深夜にNHK・BSで「ルツェルン音楽祭2005」が放映されました。

ベルク&シューベルト「歌曲集」数曲(ブリテンらオケ伴奏編曲)フレミング(ソプラノ)
マーラー「交響曲7番」
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲3番」ブレンデル(p)
ブルックナー「交響曲7番」
 以上アバド指揮ルツェルン音楽祭管弦楽団

フレミングはのりにのった歌唱でお見事。シューベルトの「鱒」がオケ伴奏になるとちょっと不思議な曲に聞こえてきます。
マーラー7番は大好きな曲で思い入れがあるので、テンポはちょっと急ぎすぎの感じで、個人的にはもっと耽美的な色気がほしい。練習をあまりしてないのかボウイングが乱れたり、指揮と間合いがずれてアバドが苦笑したり。現在のアバドは痩せて頬がこけ痛々しい限り。大編成のオケはもちろんレヴェルが高いのですが、ブルックナー7番も華やかすぎて、欲を言わせてもらえば金管あたりもっと古風な響きがほしかった。
今回もっとも見応えがあったのはベートーヴェンのピアコン3番。ブレンデルの演奏は巨匠そのもので、かつての知性的な面と最近の自由な雰囲気をあわせもった現在最高のベートーヴェン演奏家なのでは、と惚れ惚れしました。1楽章カデンツァもお見事でした。
ベートーヴェンの交響曲全集
ベートーヴェンの全集CDというのはついつい揃えたくなってしまう魔性があります(単なる病気でしょうか)。「ピアノソナタ全集」は前に書きましたので、今日は「交響曲全集」。まだまだ欲しいものがあり、中途半端ですがメモしておきます。

(1)ワインガルトナー(1936年。ウィーンPO。EMI)
録音が悪いのですが、VPOの優美な魅力と、現在につながる先進的な解釈で聴き応えがあります。とりわけ第九は名演です。
(2)メンゲルベルク(1940年。コンセルトヘボウ。フィリップス)
ライブで録音も貧しいですが、個性的なアクセントが魅力で、どちらかと言えばロマン的なベートーヴェンです。
(3)フルトヴェングラー(1948〜54年。ウィーンPO他。EMI)
主に晩年のVPO中心のもので私はBOXでなく単売(ブライトクリニックシリーズとかいう音質改善のCD)で揃えましたが、バイロイト祝祭の第九をはじめ、英雄・運命・第七などクラシック音楽史上の金字塔が目白押しで、貧しい録音を越えて精神が心をゆさぶります。また2番以外は他にも名演があり、どれを指して全集とよぶこともないと思いますし、それぞれに違った魅力があって聴く楽しみがあります(DGやターラ盤など)。
(4)トスカニーニ(1949〜52年。NBC交響楽団。RCA)
フルトヴェンが精神的・快楽的で暗さを強調しているのに対して、トスカニーニはストイックで明快さを強調している感じでしょうか(一概には言えませんけど…)。両者ともスケールが大きく優劣をつけることはもちろんできません(学生時代はこういう話題で何時間も酒席で議論したもんです)。
(5)セル(1957〜64年。クリーブランドSO。CBS)
オケが精緻でひきしまっていて、トスカニーニ型をつきつめた明快な名演。どの曲も出来不出来はなく、いつ聞いても十分満足します。
(6)クレンペラー(1957〜60年。フィルハーモニアO。EMI)
悠然としたベートーヴェンで、遅いテンポのなかから真に迫る精神性があってスケールがひときわ大きく名演です。フルトヴェングラー的な第九がとりわけ名演。
(7)シューリヒト(1957〜58年。パリ音楽院SO。EMI)
同じころのEMI企画で次のクリュイタンスとオケが入れ替わったという話をきいたことがありますが、それぞれの組み合わせが非常に面白い(逆の場合を想像しても面白いですね)。シューリヒトが例によって辛口でいながら遊び心を示しています。
(8)クリュイタンス(1957〜60年。ベルリンPO)
オケがうまく第七番第1楽章のオーボエなど各パートの美しさは光っています。フランス人指揮者ならではのテンポ感が妙にこのオケとマッチしていて、優雅な魅力があります。
(9)ワルター(1958〜59年。コロンビアSO。CBS)
これも名演揃い。LP時聞こえなかった金管のアラがCD化によって聞こえるのが残念(7番や9番)。でもワルターならではの旋律の歌い回しやスケール感は絶品です。もちろん田園が無二の名演。
(10)コンヴィチュニー(1959〜61年。ライプツィヒ・ゲヴァントハウスO。コロンビア)
数あるベートーヴェン全集のなかでもおすすめの全集。ザラっとしたオケの響きが古風で厳格で渋いベートーヴェン、テンポ感も颯爽としていて聴き飽きないし、9曲にムラもなく全集として完成度が高いです。輸入盤廉価BOXで入手しやすくなってます。
(11)カラヤン(1961〜62年。ベルリンPO。DG)
4種の全集の2回目(最初のベルリンPO)の録音。自らの手中におさめたBPOを巧みに統率し、トスカニーニ的な明快なベートーヴェンを独自の美学で演出しているところが爽やかです。とにかく速いテンポ好みの方におすすめです。
(12)シェルヘン(1965年。ルガーノ放送O。プラッツ)
怪物指揮者によるライブ録音で、足踏みの音や怒号に近い声も入った熱をおびた「とんでも演奏」、いや先進的なベートーヴェン解釈による大名演と、毀誉褒貶に満ちた不思議な魅力のある全集です。燃えたぎる度合いはフルヴェン以上で、普通の全集に聞き飽きた方におすすめします。
(13)シュミット=イッセルシュテット(1965〜69年。ウィーンPO。デッカ)
ウィーンPOの端正な魅力をもっとも生かした演奏で、激しさはない代わりに重厚かつ優美な点ではピカイチです。中庸の美学のような演奏で、第四、田園、第八などは理想的で、これも私の愛聴盤です。
(14)ベーム(1970〜72年。ウィーンPO。DG)
イッセルシュテットが優美なウィーンPOなのに対して、ベームは厳格さ、素朴さ、耽美さが強く、よりベートーヴェン的でどの曲も説得力があります。第九の第3楽章はもっとも美しい印象。
(15)カラヤン(1975〜77年。ベルリンPO。DG)
3度目の全集で、カラヤン=BPOの黄金時代の時期にあたり、カラヤン美学が徹底され、完成度も高いです。華麗でドラマティックなベートーヴェン全集。
(16)ブロムシュテット(1975〜80年。シュターツカペレ・ドレスデン。ブリリアント)
端正で渋いオケの響きが魅力的なすばらしい演奏。完成度も高くベートーヴェンを強く意識します。特に運命や田園が名演。
(17)バーンスタイン(1977〜79年。ウィーンPO。DG)
ライブ録音。フルトヴェングラーとトスカニーニを折衷したような、生命力と様式美を備えた完成度の高い名演で、一般的に推薦するなら最右翼の全集。濃厚さが充満しています。
(18)ショルティ(1986〜90年。シカゴSO。デッカ)
2種のうち新盤。オケの機能性を巧みに生かして様式美を追求した名演。スコアの読みも深くスケールも大きいですが、金管の明るめの響きは好悪分かれそう。
(19)ヴァント(1986〜1990年。北ドイツ放送交響楽団。RCA)
デジタル録音で、ドイツ的な枯れたオケの響きとヴァントならではの細部まで明快な様式美、スケールの大きさが魅力ですが、彼独自のアクセントやテンポ感で好悪分かれるかもしれません。
(20)ブリュッヘン(1984〜92年。18世紀O。フィリップス)
古楽器によるライブ全集。今まで聴いたことのない古楽器の響きやバランス感覚が魅力的ですが、それだけに終わらずスコアの読みが深くて、個性的なテンポ感やアクセントに満ちつつスケールも大きく、聴き応えがあります。
(21)アバド(1985〜88年。ウィーンPO。DG)
ライブ録音。トスカニーニ的な様式美のなかにアバドならではのカンタービレが独特で、歌い回しやアクセントで好悪分かれそうですが、ウィーンPOの熱演に聴き応えがありますが、曲によって期待に反して平凡だったりする印象もあります。

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